女子世界戦で髪の毛100グラム分切って計量クリアの珍事
一方、吉田にも世界王者にならねばならない理由がある。 母一人娘一人で戦ってきたシングルマザー。ボクシングに集中するため愛娘の実衣菜ちゃん(4)は鹿児島の実家に預け、この1か月会っていない。 「明日ようやく会えます。ボクサーであることを誇りに思ってくれています。娘の顔をくもらせるわけにはいかない。勝ってリング上で抱っこしたいです。1か月、会うことを我慢してくれた……勝ってありがとうと言いたい」 美人のママさんボクサーは、どこか嬉しそうだった。 心に響く激励メッセージも届いた。以前から面識のあった総合格闘家の山本美憂、山本アーセン親子からのムービー。 「自分らしく戦って下さい! 世界王者になれるよ!」 吉田は、元々は総合格闘技出身。その後キックに転向、2014年にボクシングライセンスを取得したという異色のバックボーンがあり、山本美憂とは、互いに”美人ママさん格闘家”という部分も含めて共通項が多い。その上、山本美憂からは「チャンピオンになってぜひグアム島に遊びに来てください」というお誘いもあった。グアムは山本家の練習拠点でもある。 当初、王者になったのちには、母娘でのハワイ旅行を計画していたが、「ほんとにありがたい。計画変更しちゃうかも」と言う。 吉田は2017年10月に新設された日本バンタム級女子王座の初代王者で、そのときの対戦相手は、美人モデルボクサーで有名だった高野人母美。判定で勝ってタイトルを獲得したが、どちらかと言えば吉田は脇役だった。だが、翌年に東洋太平洋女子バンタム級タイトルも奪取。無傷の5連勝で世界のリングにまで昇りつめた。 明日は吉田が主役だ。 「藤岡(奈穂子)さんや花形(冴美)さんら世界王者の方々や、いろんな方に協力、応援をいただき週に4度のペースでのスパーリング相手にも困りませんでした。勝つことで恩返しできると思います。世界王者にならなければならない理由がたくさんあります。自信を持って戦いたい」 吉田は格闘技出身者らしく前へ前へ出る好戦的なファイターで重さのある右のストレート、出所の見えにくいフックが武器。モートンとはリーチ差があるが、タフなメンタルと、エンドレスな前進力で世界ベルトを引き寄せそう。互いに高いモチベーションを持ち”赤い炎”がバチバチと舞う女子の世界戦にも注目である。