「採用下手の会社」、9割がハマる“数字で評価”の罠 正しい意思決定に必要「計算の意味」という視点
だから、今回のようなケースでは足し算を使うほうが望ましいのです。 今回の思考実験において、キーになっているのは「スコア化した数字をどのように計算するか」です。何も考えずに「それっぽいから」という理由だけでかけ算してしまうと、意味を取り違えてしまうのです。 同様の状況に置かれたとき、「足し算派」「かけ算派」「ケースバイケース派」のように、さまざまな見解があるでしょう。その計算の意味を論理的に説明できるのであれば、どのような手法でも問題ありません。
しかし私はこの記事で、四則演算の意味をわからずになんとなく計算した結果で仕事を進めようとしてしまうことに対して、警笛を鳴らしたいと思っています。 ■「なんとなく計算する症候群」に注意 私はビジネス数学を提唱する教育者であり、企業研修やビジネスセミナーなどで社会人の数字力や思考力強化のサポートを行っています。 そのような活動をしていると、ビジネスパーソンの皆様から「計算はAIやエクセルがやってくれる」という発言をよく聞きます。もちろんその通りですが、だからと言って、四則演算や数字の意味がわからなくてもいいわけではありません。
計算はできるのに、計算の意味がわかっていない。 そんなバカな、と思われるかもしれませんが、これは私が指導現場で目の当たりにしてきた事実です。私はそれらの事象を「なんとなく計算する症候群」と呼んでいます(私の造語です)。先ほどの事例もまさにそのひとつでした。 別の例もご紹介しましょう。かつて私が担当した企業研修において、ある小売店舗の営業を評価するために、次の指標を導入すべきではないか、と主張した方がいらっしゃいました。
(売上)÷(従業員ひとりあたりが占有する面積) 従業員ひとりあたりが占有する面積とは、総床面積を従業員数で割り算した結果ですので、上記の計算を紐解くと、次のようになります。 (売上)÷(従業員ひとりあたりが占有する面積) =売上÷(総床面積÷従業員) =(売上×従業員)÷(総床面積) つまりこの計算は、売上になぜか従業員数を掛け算し、さらに総床面積で割り算するという行為になります。この数字が、いったいどのような意味を持つというのでしょうか。