中国企業すら逃げる~いま急速に進んでいる中国から香港・東京・シンガポールへの「資本流出」のワケ
北朝鮮のおかげで中国が接近しても韓国はアメリカへ
北東アジア情勢も微妙だ。近年、北朝鮮は中国との、つかず離れずの距離を置いた関係を維持しており、派兵でロシアを支援し、韓国にも武力による威嚇を仕掛けている。これは明らかに混乱に乗じて利を得ようとする現れだ。中国にとって北朝鮮は、コントロールはできないが見放すこともできない存在になっている。さらに金正恩はトランプに「関係改善」を持ちかけ「38度線」で会談したこともある。この関係はどうなっていくのか? 北東アジアの不確定要素は増大していく。 このため、中国は近年、韓国との関係を強化し続けている。外交、経済貿易関係は改善しつつあり、バランスをとろうとしている。しかし、この動きは中国にとってあまり有益ではない。なぜなら北朝鮮とロシアにはそれぞれの思惑があり、中国が経済的な手を差し伸べても、しばしば痛い目に遭っている。 韓国は中国との経済的発展関係を維持しているが、政治・外交・軍事などいずれの面でも米国に接近せざるを得ない。 日本に関しては、日米関係は非常に強固であり、簡単には揺るがないと中国は考えており、日本国内の政治的変化も含めて観察し続けるしかない。 結びに、トランプの大統領就任後、政治や経済を含め、香港にも影響があるとの見方にも触れておきたい。政治レベルでは「アップル・デイリー」(りんご日報。すでに廃刊)のジミー・ライ事件への影響が考えられ、経済レベルでは香港への制裁を強化するかもしれない。さらには、在米香港経済貿易代表部の事務所の廃止法案を再び提起することもあり得る。 しかし筆者には、香港の民主主義や自由を理由に米国が中国との対立を深めるとは到底思えない。香港と米国の経済貿易問題に関して言えば、それは米中対立における単なる小さな駒に過ぎないからだ。 翻訳・大久保 健
劉 鋭紹(評論家)