200年ぶりに大西洋でコククジラを目撃、「とんでもないこと」 復活もありえる?
米フロリダとマサチューセッツ沖に同じ個体が、どこから来たのか
3月1日、調査のために米国マサチューセッツ州の沿岸を飛行しているとき、研究者たちは、予想すらしていなかったものを発見した。1頭のコククジラが、この種としては200年以上も目撃されていない場所で潜水し、浮上したのだ。 【関連写真】200年ぶりに目撃されたコククジラ 米ニューイングランド水族館の科学者たちは最初、眼下にいるのはセミクジラだと考えた。セミクジラはこの地域で絶滅の危機にあるため、定期的に監視されている。 しかし、しばらく時間をおいた後、もっとよく見ようと元の場所に戻って撮影すると、灰色の体には斑点があり、頭部は細長い三角形だとわかった。どちらもコククジラの特徴だ。 「少し混乱しました。それが何なのかはわかっているつもりでしたが、第三者による確認がほしいと思いました」と、ニューイングランド水族館アンダーソン・カボット海洋生物センターの准研究員オーラ・オブライエン氏は振り返る。オブライエン氏が同僚のケイト・レムル氏に写真を見せると、「たいへん、これはコククジラよ」という反応が返ってきた。 「2人で興奮し、とんでもないことだと言い合いました」と、オブライエン氏は振り返る。 2人が驚くのも無理はない。コククジラはかつて大西洋に数多く生息していたが、主に捕鯨によって一掃され、1700年代後半には絶滅してしまった。 一方、太平洋岸では法的保護によって復活し、1994年、米国の絶滅危惧種リストから除外された。過去15年間、コククジラは太平洋以外でも目撃されているが、そのほとんどが地中海とアフリカ南部の海だ。 大西洋でコククジラが目撃されたのは、2023年12月、米国フロリダ州マイアミ沖で見たという釣り船の報告だけだ。もちろん、これも17世紀後半以来の出来事だ。当時の写真と今回の写真を比較したところ、同じ個体だと確認された。健康で栄養状態も良さそうだ。 確認後、すぐに疑問が生じた。性別不明のこの個体は、どうやってこの場所にたどり着いたのだろう? メキシコのバハカリフォルニア州と米国アラスカ州を結ぶ本来の太平洋の移動ルートからは大きく外れている。そして、おそらく最も重要な疑問は、何世紀もの間、大西洋から姿を消していたコククジラが、この場所に戻ってくるのかどうかということだ。