中村はヤクルトの応援傘を持ちながら、チームメートに胴上げされた（撮影・松永渉平）

「プロ野球ドラフト会議　supported　by　リポビタンD」が24日、東京都内のホテルで開かれ、ヤクルトは愛知工大の中村優斗投手（21）を単独で1位指名した。最速160キロを誇る本格派右腕で、今年3月に行われた欧州代表との強化試合で野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームにも選出された逸材の一本釣りに成功。中村は日本選手最速となる165キロ超えにも意欲をみせた。 張りつめていた緊張は、ヤクルトから1位で名前が呼ばれると緩んだ。愛知・豊田市の愛知工大で会見した中村は、チームメートからの大歓声に立ち上がって深々と一礼。顔を上げると初めて笑みを浮かべた。 「表情はあまり出さないと決めていたんですけど、内心はめちゃくちゃうれしかったですね。ホッとしました。スワローズはいい球団ですし、本当にうれしかった」 無名の存在からドラフト1位に選ばれるまでに駆け上がった。全国屈指の農業土木職の公務員の合格率を誇る諫早農高出身。もともとは「野球も全然すごくなかったので」と長崎県の公務員を志していた。だが、コロナ禍で行われた3年夏の県独自大会に1回戦で敗退し「不完全燃焼という気持ちだった」と大学で野球を続ける道を選んだ。 高校時代は最速145キロだったが、愛知工大に入学後、ウエートトレーニングに取り組み、最速は160キロに。ドラフト1位候補と呼ばれるようになった。愛知リーグ通算301奪三振を記録。今年3月に行われた欧州代表との強化試合で野球日本代表「侍ジャパン」のトップチームにも選出された。 伸びしろも抜群だ。日本ハム時代の大谷翔平（現ドジャース）やロッテ・佐々木朗希が持つNPB日本選手最速となる165キロ超えも夢ではない。「まずは163キロくらいで。まだまだフィジカル面も弱いので、そこを強くしていければもっともっと伸びていけると思う。スワローズの投手の方にいろんな話を聞いて成長していきたい」と意欲をみせた。 長崎で生まれ育ち、大学から愛知で成長を遂げ、次なる舞台は東京・神宮球場だ。大学の日本選手権などが行われるが、まだ一度もプレーしたことがない。「大学時代も神宮球場で戦うことを目標にやってきて、一度も戦えなかった。（チームの）みんなの思いも背負って活躍していきたい」。最初の目標は新人王に定めた。燕のエースとなるべく、新たな物語が始まった。（森祥太郎）