「24分間」の息止め世界記録 365日休まず酸素を供給する肺の驚異的なパフォーマンス
「肺」は全身(何十億もの細胞)に酸素を送るスーパー装置
とはいえ、肺はかなり苦労してあなたを生かし続けている。平均的な体格の成人なら、皮膚の表面積はおよそ2平方メートルだが、肺組織の表面積は約90平方メートルで、そこに収まる気道をつなげると約2400キロメートルにもなる。こんなにもたくさんの呼吸装置を胸のささやかな空間に詰め込んだことで、どうやって何十億もの細胞に効率的にたくさんの酸素を届けるかというかなり重大な問題が鮮やかに解決されている。
その入り組んだ収納術がなければ、わたしたちは昆布(こんぶ)のような姿をしていたかもしれない――体長数十メートルにもなるが、酸素交換を容易にするために、すべての細胞を表面のごく近くに備えているのだ。
息を吸って、入ってくる空気の80%は窒素
深く息を吸ってみてほしい。生命の源である豊かな酸素で肺が満たされているような気がするだろう。実を言うと、そうでもない。あなたが吸っている空気の80パーセントは、窒素だ。大気中で最も豊富な元素で、わたしたちの存在にとって欠かせないものだが、他の元素と相互作用はしない。息を吸うと、空気中の窒素は肺に入るが、まるでぼんやりした買い物客が間違った店に迷い込んだときのように、そのまままっすぐ外へ出ていく。 窒素をヒトに役立つようにするには、もっと社交的な形、たとえばアンモニアなどに変換する必要がある。その仕事をしてくれるのが「細菌」だ。彼らの助けがなければ、わたしたちは死んでしまう。それどころか、存在することさえなかっただろう。今こそ、自分の体に棲んでいる微生物たちにお礼を言うべき時だ。 *** この記事の関連記事【アナタの体に棲んでいる「微生物」は約1.4kg! ほぼ「脳と同じ重さ」 人間は彼らなしに生きていけない】では、私たちの体を“わが家”にする膨大な数の「細菌」の知られざる事実について明かしている。 ※本記事は『人体大全 なぜ生まれ、死ぬその日まで無意識に動き続けられるのか』より一部抜粋・再編集しています。 ※息を止めていた記録は2016年当時のものです。
デイリー新潮編集部
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