【#佐藤優のシン世界地図探索90】シリア軍・秘密警察から見限られて崩壊した「アサド独裁」
佐藤 そうですね、そういう構図として見たらいいと思います。 ただ、全体としていえることは、アメリカの影響が弱まっていて、世界で持っている力、つまり、現実的な力での再編が起きているということです。 シリアにおいてはアサドたちの力が過大評価されていました。それが今回、現実の力の均衡線になったというだけのことです。 ――それは、この連載でも言われている「世界のルールが変ってきた」、すなわち、暴力と言う「力」が加わった結果ですね。(参考:【#佐藤優のシン世界地図探索85】北朝鮮軍の「ウクライナ参戦」から変わる世界ゲームのルール、【#佐藤優のシン世界地図探索88】トランプ革命③ 敗北した「西洋の惨状」) 佐藤 そう、力の均衡で決まっていきます。それ自体は何にも不思議なことはありません。ただ、このゲームがシリアという国家単位でまとまって行われるならいいんですが、そうはならないでしょう。なので、リビア化する可能性があるのです。 ――どんな戦国地図になるとお考えですか? 佐藤 北西部にはアラウィー派が固まっているから、そこが拠点になるでしょう。残りの地域では、まずスンナ派は地域毎に部族単位になるでしょうね。スンナ派は宗教で固まるには人数が多いからです。そしてキリスト教徒はキリスト教徒だけで固まっていきます。 ――そして東側地域にクルド。 佐藤 その通りです。ポイントは、ロシアです。露軍が駐留しているタルトゥースの海軍基地を維持できるかどうかです。維持できる可能性は十分にあると思います。 ――それは、北西部にいるアラウィー派とこれまで取引があるからですか? 佐藤 そこの部族にロシアが金を払って「海軍基地を置かせてくれ」と取引して、許可が出れば可能ですね。 むしろ、ロシアにとってはそのほうがメリットはあるかもしれません。まず、シリア全体を支援するより安上がりです。それにアサドのように自国民にサリンを使う、道義的な問題のある政権と付き合わないで済みますからね。 ――そこの部族にとっては、大国ロシアにケツを持ってもらえるとなれば、絶対的な安全が保証されますね。 佐藤 当該地域の部族にとって、ロシアにケツ持ちしてもらえればメリットは大きいですよね。 ――すると、その部族は「来てもいいよ」となる。