高齢化する戦争体験者「伝え残したい」 NHK戦争証言アーカイブス・プロデューサーに聞く(上)
今年8月15日で終戦から69年。戦争当時を知る戦争体験者は高齢化で年々少なくなっている。そんな中、元兵士や市民など戦争体験者の証言を集めて公開しているのが動画サイト「NHK 戦争証言アーカイブス」だ。なぜ戦争体験を次世代に伝えようとしているのか。その立ち上げを主導し、いまもチーフ・プロデューサーとして関わるNHKの太田宏一氏(51)は「戦争体験者の『語り残したい』という強い思いを感じる」と語る。 【画像】自分ならどうする?戦争の「リアリティー」 (下)
凄惨な戦争体験
「NHK 戦争証言アーカイブス」には、戦争を体験した兵士や市民ら約1000人の証言が集められている。 「一番衝撃的だったのはテニアン島の住民の方の証言だった」と太田氏は振り返る。 マリアナ諸島にあるテニアン島には、戦争中、多くの日本人が移住していた。そこへアメリカ軍が上陸してきて、日本軍は追い詰められていった。しかし当時、捕虜になることは日本人としての恥だという思いがあったため、父親と母親に「殺してくれ」と頼まれたのだという。その証言者は、自分の父親と母親、そして妹を銃で撃って殺し、自分も自決しようとしたところで、アメリカ軍に拘束されて捕虜となり、生き残った。 「その方はずっとそのことを誰にも話してこられなかった。家族の方たちは証言することに反対だったようだが、ご本人が『語るんだ』と強く望み、家族を説得してまで証言してくれた」。太田氏は、その人の話をするときは毎回、涙が出てくると語る。
高齢化する戦争体験者
2010年夏に開設した「戦争証言アーカイブス」は、2007年8月からスタートしたシリーズ番組「証言記録 兵士たちの戦争」と、2009年8月から始まった「証言記録 市民たちの戦争」で紹介された証言がベースになっている。 NHK内ではもともと戦争体験者の証言をまとめて記録するべきではという話が出ていた。戦争の体験者が高齢化していく中で、例えば将校クラスだと手記を残していることもあるが、末端の兵士の人たちは、証言がまとまった形でほとんど残っていないという状況があった。「そういった人たちが亡くなられる前に、きちんと証言として残して未来に伝えていかなければいけない、というのが『戦争証言 アーカイブス』を始めた一番最初の動機」だと話す。そういった経緯から、シリーズ番組をつくって放送しながら、証言を収集していくという形で2007年から取り組み始めた。