アラフォー世代が左右される〝どうしようもない偶然〟「人生は転換点に満ち満ちている」物語書きたかった 作家・平野啓一郎『富士山』
――アラフォーは体の曲がり角でもある
「僕が40代になったときは、『メンタルヘルス』の方を心配しました。周りにうつ病になった知人もいましたから。どうやってメンタルの問題を乗り越えるか、と。ところが40代も後半になると、『フィジカル』の方にガタがくることを実感しました。体のあちこちに不具合が出て来るし、周りとも(検査の)数値の話になったり。一般人は医学の専門知識もないし、ネットの情報は不安にさせることばかり。あれは良くないですね」
――本が売れない時代ですが…
「僕は二極分化だと思っています。読む人と読まない人との…。世界を見渡してみても、ある一定以上の人口を持つ国では『純文学マーケット規模は変わらない』というデータもあるようです」
■『富士山』(新潮社)1870円税込み
〝アラフォー〟の男女はマッチングアプリで知り合って半年、浜名湖へ初めての旅行へ出掛ける。だが、停車駅のホームでSOSのサインを送る少女を見つけた女は、助けようと、ひとり新幹線を降りてしまう。2人はその出来事をきっかけにぎくしゃく。女はやがて衝撃的なニュースを耳にする…。表題作の『富士山』など5つの短編集。
■平野啓一郎(ひらの・けいいちろう) 1975年、愛知県出身。49歳。作家。京都大学法学部卒。大学在学中に文芸誌に書いた『日蝕』で99年、芥川賞受賞。当時最年少の23歳だった。主な作品に『マチネの終わりに』(渡辺淳一文学賞受賞)、『ある男』(読売文学賞受賞)、『本心』『三島由紀夫論』など。
(取材・梓勇生/撮影・安元雄太)