西洋医学×漢方医学のスペシャリスト、今津嘉宏先生が教えます! 漢方は未病の段階でも治療の対象。体質や状態に合わせて処方してくれる!【40代・50代、漢方の知識、基本のき①前編】
Q4 漢方でよく耳にする「五臓」とは?
A 体の働きや機能を、肝、心、脾、肺、腎の5つに分類して考えるが、現代漢方ではあまり使われなくなっている 「漢方では、“五行論”といって、自然界に存在するあらゆる物質は、木・火・土・金・水の5つの元素からなるという考え方があります。この5つは、お互いに関連し、調和を保っていると考えられています。 そして、体の働きや機能も、五行の特性に合わせて、肝、心、脾、肺、腎の5つに分類して考えます。五臓は、肝臓、心臓などの臓器だけを指すのでなく、その機能や概念も含みます。 中国医学や韓医学ではよく使われる表現ですが、現代医学では証明が難しいものが多いので、漢方医学ではあまり使われなくなっています。しかしながら、薬剤師や鍼灸師などが使う用語では、“腎が弱っている”“肝が悪い”などと表現されることがあります」
Q5 西洋医学と漢方医学の違いとは?
A 漢方医学は、病気でない“未病”の段階でも治療の対象とする 「現代の西洋医学では、検査に基づいて病名がついた場合に治療の対象として、痛みがあるなら鎮痛剤を処方するというように、そのときの症状を抑える治療をする対症療法が中心です。そのため西洋医学では、どんなに不調があっても、検査で異常がなければ治療ができない場合があります。 これに対し漢方では、その人の体質や体の状態から原因を見極め、病気ではない“未病”でも治療の対象とし、原因から根本改善をしていきます。 特に女性には、原因がよくわからない不定愁訴が多いですが、このような症状は漢方の得意分野です。 ただし、漢方は手術などの外科的な処置や、一刻を争うような緊急の症状の治療は苦手です。また、西洋医学による診断や検査結果を組み合わせて行うことが大切になります。 西洋医学と東洋医学を、うまく使い分けるのがおすすめです」 次回、後編では漢方を飲む際に知っておきたいことを教えてもらう。
【教えてくれたのは】 今津嘉宏さん 医師。「芝大門 いまづ クリニック」院長。藤田保健衛生大学医学部卒業後、慶應義塾大学医学部外科学教室に入局。国立霞ヶ浦病院外科、東京都済生会中央病院外科・副医長、慶應義塾大学医学部漢方医学センター助教、北里大学薬学部非常勤講師などを経て、2013年に「芝大門 いまづ クリニック」(東京都港区芝大門)を開業。日本外科学会認定医・専門医。日本消化器病学会専門医。日本東洋医学会専門医・指導医。西洋医学と東洋医学に精通し、科学的見地に立って漢方による治療を実践。おもな著書に『健康保険が使える漢方薬の事典』(つちや書店)、『まずはコレだけ! 漢方薬』(じほう)などがある。 写真/shutterstock 取材・原文/和田美穂