西洋医学×漢方医学のスペシャリスト、今津嘉宏先生が教えます! 漢方は未病の段階でも治療の対象。体質や状態に合わせて処方してくれる!【40代・50代、漢方の知識、基本のき①前編】
Q2 漢方の理論のベースになっている「陰陽」「虚実」「表裏」とは?
A 漢方の診断法で、体の状態や生まれ持った性質を二者択一で見極める 「“陰陽”、“虚実”、“表裏”は漢方で、体を診断するときに用いるベースとなる理論です。 漢方の理論はすべて二者択一になっていて、陰陽は“陰”と“陽”、虚実は“虚”と“実”、表裏は“表”と“裏”、気血水は“気”と“血水”に分かれ、診察をするときに、このうちのどちらの状態かを見極めていきます。 陰陽は、性格が暗い(陰)のか、明るい(陽)のか、体が虚弱(陰)なのか、健康(陽)なのかという、持って生まれた性質を診断します。 虚実については、元気がないなら虚で、元気なら実。また、気持ちが落ち込んでいるときは虚で、気持ちが元気なときは実と診断します。 表裏は、体の表面に変化があるなら表、体の中に変化があるときは裏と診断します。例えば風邪をひいたとき、皮膚がゾクゾクしたり、背中が寒かったりすると思いますが、これは“表”の症状です。時間とともに、喉が痛くなったり、体の芯が熱くなったりするのは“裏”の症状です。漢方ではまずこれらを診断します」
Q3 漢方には、「気血水(き・けつ・すい)」という考え方もありますが、これはどういうもの?
A 3つがバランスよく巡っているのが「健康」で、どこかに乱れがあると不調が起きると考える 「漢方では、体の中を気・血・水という3つの要素が巡っているという概念があります。 “気”とは、気分や気力など精神的なエネルギーのこと。体力や元気などの肉体的なエネルギーや、エネルギーを取り込む消化器の状態も意味します。 “血”は血液に関連するものだけでなく、女性ホルモンの変化も意味します。昔から、年齢による女性ホルモンの変化からくる症状を“血の道症”と言うのは、そのためです。 そして“水”は、体の水分の変化を指します。リンパ液や汗、唾液、尿など、血液以外の色のついていない体液の変化のことです。むくみや渇きなどは“水”の変化によって起こる症状です。 漢方では、この3つがバランスよく巡っている状態を“健康”ととらえ、どれかが停滞していたり不足したりして、バランスがくずれると不調が起こると考えられています。 例えば、気の巡りが悪いことを“気滞(きたい)”、気が不足していることを“気虚(ききょ)”、血の巡りが悪いことを“瘀血(おけつ)”、血が不足していることを“血虚(けっきょ)”といいます。 また、水の巡りが悪いことを“水滞(すいたい)”、水が不足していることを陰虚(体を冷やす水=陰の不足)といいます。 漢方では、このように、気血水のどこにバランスの乱れがあるかを診断して、その状態に合う漢方薬を選びます」