100m日本記録保持者サニブラウンのプロ転向宣言。東京五輪へ向け何がどう変わるのか!?
まずは競技面。ダイヤモンドリーグなどハイレベルな試合に参戦することが可能になり、ドーハ世界選手権で逃した「ファイナル進出」に向けて、多くの経験を積むことができる。何より、チームジャパンとしては、サニブラウンとの練習時間を確保できるようになるのが大きい。 サニブラウンはドーハ世界選手権の男子4×100mリレーでアンカー(4走)を務めたが、他選手との練習時間が少なかったため、バトンパスが不安視されていた。予選では“安全バトン“となり、3走の桐生祥秀や土江寛裕・男子短距離オリンピック強化コーチから注意を受けるほどの状況だった。 決勝で銅メダルを獲得した後、「リレーは100mと違う楽しさがありましたね。過去2大会は見ている側だったので、走っている選手はこんな気持ちなのかなという感じで、最後は笑顔になりました。日本チームは、バトンをしっかり渡してくれるのを信じて走れるのが一番の強み。マジメな性格もそうですし、他国と比べてバトンの練習量も多い。謎の信頼感がありますね」とサニブラウンは話していた。 東京五輪に向けて、土江コーチはサニブラウンを2走に起用する構想を持っている。フロリダ大では今季2走を務めたサニブラウンだが、チームは一般的な「オーバーハンドパス」だったこともあり、日本のお家芸といえる「アンダーハンドパス」には慣れていない。これまでの状況では「2走サニブラウン」は難しいかと思われたが、今後は日本代表の練習に合流する機会が増えるため、受け取るだけでなく、バトンを渡す2走の練習もしっかりできる。日本代表としてはエースの走力を十分に生かせるオーダーを組むことができるようになり、金メダルという大きな夢に近づけるはずだ。 ビジネス面でもスポーツメーカーとの契約だけでなく、東京五輪での活躍次第では、一般企業からCMオファーなどが殺到することも考えられる。プロのアスリートとして金銭的にも大成功を収めることができるかもしれない。 ドーハ世界選手権ですべてのレースを終えたサニブラウンは、「速さやタイムもそうですけど、しっかりと3本、自分の力を発揮できる強さを身につけていかなければいけない。世界のレベルも年々上がっていますし、そのなかで自分もそれ以上のレベルアップをしないと(個人の)メダルは見えてこない。4継にもいいかたちでつなげられない。まずは自分個人がいい走りをできるようにならないといけないと感じました」という感想を口にした。大学の授業はあるものの、プロ転向でこれまでよりも競技に集中できる。東京五輪まであと9カ月。サニブラウンの決断が、新国立競技場に熱狂をもたらしてくれるだろう。 (文責・酒井政人/スポーツライター)