ハイブリッド専用エンジン? アトキンソンサイクルとは
燃料電池、ハイブリッド、ディーゼルといった新技術の登場で、存在感が薄れつつあるガソリンエンジンだが、ガソリンエンジンの技術的な進歩もまだまだ止まっていない。ただ昨今の技術はなかなか説明が難しく、結果的に簡単にユーザーが「おおスゴイ!」と思えないことになっている。書く側もどうやって噛み砕いて説明するか苦労するところだ。 筆者がよく質問される言葉のひとつが「アトキンソンサイクル」だ。「あれってハイブリッドの専用エンジンなんですか?」。ここで苦笑いをしている読者の方も結構いると思う。この技術、トヨタとホンダのネーミングが変なのだ。それは後で説明しよう。別にアトキンソンサイクルはハイブリッドの専用ではないし、普通にそのまま使われている例も多い。 ひとまず、アトキンソンサイクルとは何かという概要をざっくり言うと、燃焼時の圧力をもっとたくさん力として取り出せないかというチャレンジで、その為の手法としてはアトキンソンはある種、原始的なもの。アイディアに忠実に複雑な仕組みであれこれ考えてなんとか実現しようとしたけれど、後から「ミラーサイクル」という上位互換技術が出てきて、同じ結果を魔法のように安く堅牢かつ簡単に実現してしまったので、もう本当のアトキンソンサイクルを作ろうという人はほとんどいないのだ。 ところが日本にはホンダという変な会社があって、正真正銘本物のアトキンソンサイクルも作っている。それは家庭用コージェネシステムの「エコウィル」に搭載されているエンジンだ。まずはその作動イメージ図を見て欲しい。
ピストンが1回転目と2回転目で違う動き
ヤケに複雑なリンクが付いたクランクが「720度」、つまり2回転で1サイクルする。そういう意味では普通の4サイクルエンジンと同じだ。普通のエンジンはピストンやクランクは1回転目と2回転目で全く同じ動きをする。その時、動きが異なるのはこの図では触れられていない吸排気バルブ周りだけだ。 ところがこのアトキンソンサイクルはピストンの動きそのものが1回転目と2回転目で違う。図の180度のピストン位置と540度のピストン位置を比べて見て欲しい。540度の時の方がより下にあることがわかるだろう。 何でそんなことをするのか? 540度の時の一番上に書いてある文字を見ると「膨張行程」と書いてある。つまり360度から540度にかけては燃焼が行われ、燃焼室内のガスが膨張してその圧力をピストンが力として受け取っているところだ。 燃焼ガスは540度の時点でも1気圧まで下がっていない。もし大気圧と同じ1気圧まで下がっていたら排気ができない。圧力が高いからこそ弁を開けるとガスが外へ出ていくのだ。 しかし、高い圧力が残っているなら、むやみに捨ててしまわず、1気圧までとは言わないから、もうちょっとエネルギーとして取り出して効率を向上したいではないか? だったらロングストロークにすればいい。