明日開幕!伊調を破った川井梨紗子はレスリング世界選手権で東京五輪代表を内定できるのか?
昨年の55kg級世界王者の向田は、2年ぶりに本来の53kg級で出場、東京五輪出場だけでなく念願の53kg級世界一を目指す。2017年の世界選手権決勝では、残り数秒から逆転負けで2位に終わり「攻めきれなかった」と涙を流した。 栄和人強化本部長(当時)は敗戦の内容を見て「(攻めきれない)病は深い」と判断し、みずからのレスリングと落ち着いて向き合えるように、あえて五輪で実施されない55kg級でしばらく戦うように指示した。真面目な反面、思い詰めやすい性質をもつ向田にとって、しばらく53kg級から離れた効果は高かったようで、自信を取り戻して再び53kg級で世界に挑戦する。 復帰組といえば、川井とともにリオ五輪金メダリストの土性沙羅(東新住建)が久しぶりに世界の舞台へ戻ってきた。2018年は脱臼が癖になりかかっていた肩の手術をしてリハビリに専念してきた。「最初から攻める」という目標どおりの試合で2度目の五輪出場を狙う。 強国と言われる日本の女子レスリングだが、重量級については苦戦を強いられてきた。強いことと、競技人口は比例しないため重量級は練習相手に恵まれない。そのなかで近年、最重量級で健闘している皆川博恵(クリナップ)は、76kg級でメダルを目指す。4年前の世界選手権代表に決まっていながら、ケガで出場機会を逃した皆川だが、復帰してからは2017年、2018年と世界3位となり表彰台に上がっている。「組み合わせの運がよかっただけ」と皆川自身は謙遜するが、3年連続の表彰台を期待したい。 「レスリングは個人競技ですが、女子はチームであることを意識して、みんなで強くなってみんなが勝つんです」と笹山秀雄・女子強化委員長が言うように、女子の初日に登場する入江と向田が手堅く決勝へと進めば、全階級で決勝進出も絵空事ではなくなるだろう。 初出場の入江が変則的な相手が多い現実に戸惑わないとよいが「考えすぎて、緊張を通り越した」という向田の柔軟さに引っ張られれば不安はないのかもしれない。 皆川が挑戦する最重量級は、世界を見渡しても抜きんでた選手がいない。練習相手が不足するなど不利な状況にある日本の重量級だが、混戦のチャンスを生かしたい。そして姉の梨紗子の行く末を見届けた妹の友香子と、土性は決勝まで順当に進むだろう。 今大会の金メダル獲得と五輪代表内定者が何人になるのか気になるところだが、前出の笹山氏は「みんなで勝つのでメダル数の予想はしません」と発言している。だが、本音は全階級で表彰台を確保して五輪代表を内定、金を最低でも「4」、いや全階級で狙っているのだろう。 (文責・横森綾/フリーライター)