KKRとベインによる異例のTOB合戦、PE市場巡る競争激化へ
(ブルームバーグ): 米系投資ファンドのKKRが8月、独立系ソフトウエア開発会社の富士ソフトに対して、株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した際、日本の買収市場における一案件に過ぎないと思われた。
しかし、その後、異例の展開をたどることになった。同業の米ベインキャピタルが富士ソフトに対して7%高い対抗買収案を提示。米大手プライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンド同士による買収合戦へと発展し、投資家を驚かせた。
「日本のPE業界で多くの動きを見てきたが、このような性質の資産を巡って大手ファンド同士が競ったケースは記憶にない」。米ヘッジファンド、インダス・キャピタル・パートナーズのポートフォリオ・マネジャー、ハワード・スミス氏はこう語った。
日本ではかつて「ハゲタカ」と揶揄されたことから、世界的なPEファンドであっても、築き上げた評判を維持するため、ディールを成立させるためには控えめなアプローチを好んできた。
しかし、富士ソフトを巡っては、KKRとベインの両社が買収を正当化するための積極的なキャンペーンを展開。KKRは富士ソフトの取締役会と大株主だったヘッジファンドへの支持をアピールし、ベインは富士ソフト創業者からの支援とともに、より高いTOB価格を提示した。
そして先週、KKRはベインのTOB価格を1円上回る金額に引き上げた。買収総額は当初見込んだ約5600億円から約6000億円へと膨らむ。富士ソフト取締役会はベインの提案に反対を表明した。
大手PEファンド2社による買収合戦は、日本におけるPEを巡る環境がいかに急速に変化しているかを示している。ブルームバーグ・データによると、今年発表されたPEファンドが日本企業を買収した案件は120億ドル(約1兆9000億円)を超えた。アナリストや投資家は、買収ターゲットを求める意欲的な買い手が大胆な戦術を用いることを促すだろうとみている。