KKRとベインによる異例のTOB合戦、PE市場巡る競争激化へ
中堅企業を対象とした案件に重点的に取り組む国内投資ファンド、日本産業推進機構(NSSK)の津坂純社長は「日本では欧米式のやり方はできないという考え方が今や通用しなくなっていることを示している」と指摘。「今後こうした案件がさらに増えるだろう」との見方を示す。
海外のPEファンドは、日本企業が変革の時期にあると長らく見てきた。コーポレートガバナンス(企業統治)改革が定着し、企業は株式の非公開化や非中核事業の売却など、変化に対して柔軟に対応するようになった。インダス・キャピタルのスミス氏は「買収市場が流動性を増し、日本の経営陣がこうした非公開化に前向きになっていることを示す兆候だ」と語る。
円安と長く続く低金利も日本企業に対する魅力を高めており、KKRや米ブラックストーン・グループのトップは最近、日本での事業拡大に意欲を示している。
KKRの共同最高経営責任者(CEO)であるジョー・ベイ氏は今週香港で開催されたフォーラムで「世界の中でPE事業のリターンが最も高いのは日本だ」と指摘。「日本については依然として非常に強気であり、今後多くの成長が期待できる」との認識を示した。
一方、KKRとベインによる富士ソフトを巡る買収合戦は、海外投資家が依然として課題を抱えていることも示唆している。昨年の2兆円規模での東芝の買収や9000億円規模での半導体材料メーカーJSRの買収は、投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)連合や政府系ファンドの産業革新投資機構(JIC)とそれぞれ日本のファンドが主体となった。
その結果、最近の資金調達ラウンドで新たな資金を獲得したPEファンドが大型案件を追い求める意欲を強めている。事情に詳しい関係者によると、富士ソフトの売却プロセスにおいて、ブラックストーンやMBKパートナーズといったPEファンドも最終候補に残っていたという。
富士ソフトの価値は、人材と不動産を多く保有している点にもある。同社は東京周辺に多数のオフィスを所有している。また、投資家らによると、富士ソフトが抱えるITソリューションを提供する人材も、テクノロジーやエンジニアリング分野で熟練した労働者が不足している日本では特に魅力的だ。