「私の写真を見た父に『このおじさん誰?』と言われて」伊藤理佐の新作、キーワードは加齢&介護&韓国!
加齢は言い訳として使える
――家族間って、つい相手のせいにしてギスギスしがちなので、ぜひ見習いたいですね。伊藤さんは着物や韓国語など、趣味や習い事も貪欲に楽しんでますよね。 それも全部、40歳超えてからですよ。歌舞伎にハマって、着物にハマって、踊りにハマって、BTSから韓国語にハマって、まだ描いてないけど最近ピラティスも始めたんです。もともとドイツの負傷兵がリハビリのためにやってたものと聞いて、それなら私もできるかなって。身体が固すぎる! と言われながらもやってます。 ――忙しそうですが楽しそう! 昔は漫画ばっかり描いてたし、それ以外も家でダラダラしてたい人間だったのに。時間もお金も掛けて何やってるんだろうって思いますけど、ボケないため、寝たきりにならないため、脳と足腰を鍛えてるんだと言い訳して……。 加齢って本当に使えますよ。行くのが面倒になっても、加齢予防のため! と思うと動けるし、逆に面倒で行けなくても、加齢だし……って言い訳できる。 こないだ日本舞踊の発表会が国立劇場であって、白塗りの顔で出たら吉田がびっくりして、「理佐は金かけて遊んでんなー」って感心してました(笑)。 ――そんなふうに「好き」を謳歌している母の姿を娘のあーこちゃんに見せることも、大事な教育ですよね。 そう思います。娘も楽しそうだねってうれしそうにしているので、甘えて遊ばせてもらってます。
辛いことがあっても全て漫画のネタになる
――『おんなの窓』以外でも、伊藤さんはご自身の生活を漫画に描くことが多い。プライベートを世間に晒すのは大変ではないですか? 昔からずっと自分ネタを書いてるもんだから、辛いことがあってもネタになると思えるし、そうすると何かが下がるんですよ。私いまこんな辛い目に遭ってるけど、描けるから大丈夫、勝った! って(笑)。 ――作家でなくても、その心意気は見習いたい! 良くも悪くも垂れ流し、描き散らかしですよ。自分の漫画を読み返したりもしないので、前と真逆のことを言ってたり、逆に同じネタを何度も描いたりもしてるけど、それもすべて加齢のせい(笑)。 加齢も介護も韓国も、まだまだ足を踏み入れたばかりのひよっこですが、何かあっても全てネタにして、加齢かな? で乗り切りたいですね。 伊藤理佐(いとう・りさ) 1969年、長野県生まれ。87年に「お父さんの休日」でデビュー。2005年『おいピータン!! 』で第29回講談社漫画賞(少女部門)、06年に『女いっぴき猫ふたり』など一連の作品で第10回手塚治虫文化賞(短編賞)を受賞。24年春にドラマ「おいハンサム!! 2」が放送され、6月には映画『おいハンサム!! 』が公開された。
井口啓子