マクドナルド最悪のピンチから「驚異のV字回復」 間もなく退任のカサノバ氏が率いた数年の軌跡
顧客目線に立ち、顧客の声を聞き、顧客とともに商品、サービスの改善に努めることで、日本マクドナルドの改革は多くの人々から共感され、歓迎されるに至った。最終的に業績回復へとつなげることに成功したのである。 商品、サービス改善と並行して、カサノバ氏のイメージ回復対策が取られている。 2015年2月に行われたた決算発表会見では、カサノバ氏はマクドナルド商品への異物混入トラブルについて、深々と頭を下げて謝罪した。外見も、髪の毛を後ろで束ね、眼鏡もフチなしのものに変えるなど、前回の記者会見時と大きく変わった。テレビの報道番組の中では、カサノバ氏の「ビフォーアフター」を比較して報じるものもあったほど、短期で大きな印象の変化が見られた。
単なる「印象操作」ではなく、実態も伴っていた。カサノバ氏は、47都道府県すべてを回って、顧客、特に小さな子どもを持つ母親から話を聞いた。現場のスタッフとも直接対話を行い、問題点や要望を吸い上げた。 「現場主義」、「ボトムアップ」は日本企業の特長とされているが、カサノバ氏の一連の行動は、「外国からやってきた、日本のことを知らない経営者」というイメージを一新したに違いない。 2017年8月には公式サイトのカサノバ氏のあいさつが突然関西弁に変わっており、大きな話題を呼んだ。
これは、同月に行われたマクドナルドの愛称が「マック」なのか「マクド」なのかをSNSで投票してもらう、「マックなのか? マクドなのか? おいしさ対決!」キャンペーンの一環として行われた施策だった。最終的に関西勢の「マクド」が勝利したことを記念して、カサノバ社長(当時)の公式サイトあいさつ文を関西弁に変えるという、遊び心のある施策を行ったのだ。 人々の親しみと関与度を増すために、さまざまな顧客参加型キャンペーンを行ったが、企業広報とも連携させ、カサノバ社長のイメージアップにもつなげていくという、戦略的かつ、首尾一貫した取り組みであった。