「青少年の性的感情を刺激」するのは何か 日本マンガ学会と県の間で巻き起こった物議
成人向けの雑誌やコミックを回収するため、駅前などに設置された「白ポスト」。1963年、兵庫県尼崎市で誕生した。「青少年に読ませたくない雑誌」を回収する目的で、ドラム缶を白く塗って街角に置いたのが始まりとされる(同市ホームページ)。貸本マンガや不良雑誌などを対象にした50年代からの「悪書追放運動」にも呼応し、白ポストは各地に広がった。 【写真】物議を起こした書籍 ◇ ■そもそも「有害図書」とは何か そもそも、「有害図書」とは何か。都道府県は青少年の健全育成をうたう条例に基づき有害図書などを指定しているが、その判断を巡って物議を醸すケースも出ている。 滋賀県によると、指定は2通り。「包括指定」は「卑わいな姿態や性交などの描写が20ページ以上または総ページ数の5分の1以上、ビデオは3分を超えるもの」といった規定に基づき、調査員が調べた上で指定する。 ■滋賀県の指定は2023年度までの10年で1326点 「個別指定」は、わいせつだけでなく、著しく粗暴性や残虐性を助長するものなどを、外部委員による審議会で決めている。 県の指定は2023年度までの10年で1326点。18歳未満への販売や貸し出しを禁じ、書店では一般書と区別して陳列する。県立図書館では全て書庫で保管し、閲覧や貸し出しの際は年齢を確認している。 ■「有害とまでは認めがたい」意見も 過去に議論を呼んだ指定もあった。17年度の「全国版あの日のエロ本自販機探訪記」(双葉社)はその一つだ。消えゆく自販機の事例を歴史も交えて紹介する内容だが、「著しく青少年の性的感情を刺激する」などと判断。これに対し、日本マンガ学会は「それ自体がポルノグラフィであるわけではなく、フィールドワーク」「公共図書館での収集や提供にも制限をもたらしかねず、研究の萎縮をも招きかねない」などと反対声明を出した。 県によると、委員から「有害とまでは認めがたい」との意見もあったが、事務局の県職員が青少年の健全育成の取り組みを説明し、再審議を経て指定に至ったという。