「本来の資産運用は将来に備えるゴールベースアプローチが必要」…日本資産運用基盤グループ・大原啓一社長
――もう一つの主力事業は。
「運用会社の運用以外の業務を支援する事業だ。私自身、創業した運用会社で苦しんだ。当社の基盤が運用会社の事務やシステムを集約して請け負うため、運用に集中できる。投資判断をする数人のスタッフだけで運用会社を経営でき、早期に黒字化もしやすい。運用会社や業界全体の事業効率が上げられる。当社は、多くの人員やシステムを抱えているわけではないので、三菱UFJ信託銀行と連携して請け負っている」
顧客と金融機関、両方もうかる仕組み
――政府が進める「資産運用立国」に対する問題意識は。
「金融業界は、投資商品を提供するだけでなく、それを使ってどうやって将来に備えるのかという資産運用サービスをもっと考えなければいけない。自前主義から脱却して効率化することも大事だ。そうすれば、金融機関の利益も増える」
――生活者の利益と業界の利益は両立するのか。
「資産運用サービスは本来、顧客と金融機関の両方がもうかる仕組みだ。顧客の資産が増えたら、金融機関側は残高に応じて手数料が増える。ただ、金融機関側が売り上げを考えて手数料を下げすぎると、運用業界はもうからなくなり、人材も集まらず、資産運用立国が進まなくなる」
――「資産運用立国」を進めるために何が必要か。
「国や業界が目指す将来の姿を掲げた方が良いだろう。業界の就業者数や利益をいつまでにどのくらいに増やすかといったことや資産運用業界が国内総生産(GDP)の中でどれくらいの割合を占めるという具体的な数字を示す。もっと稼げる業界に成長し、GDPの拡大に貢献しなければならない」
◆大原啓一氏(おおはら・けいいち) 2003年東大法卒、野村総合研究所入社。04年、興銀第一ライフ・アセットマネジメント(現アセットマネジメントワン)に入社し、英国法人に7年半出向する。10年、英ロンドン・ビジネス・スクール金融学修士修了。帰国後の15年に資産運用会社を創業。18年に日本資産運用基盤グループを設立し、社長。