「本来の資産運用は将来に備えるゴールベースアプローチが必要」…日本資産運用基盤グループ・大原啓一社長
日本では、業として登録するのに手間がかかり、高いシステムを買う必要がある。事務やシステムの人も雇わなければならない。硬直的な垂直統合型の事業のままで、端的に表現すれば、すべてを自分でやることが尊いという自前主義だ。私は、個人の顧客向けのサービス作りに専念したかったが、こうしたことを考えるのに8割は気を取られた」
――そこで現在の会社を始めた。
「小さな会社が、直接個人の顧客にサービスを提供するのではなく、理念に賛同してもらえる金融機関を多く集めて、日本中の顧客にサービスを届けることにした。一方、金融機関にとって効率の悪いことをなくすために、当社が共通インフラ(基盤)を提供する必要もあると考えた。この二つが現在の主力事業につながっている」
垂直統合ではなく水平分業
――一つ目の主力事業は。
「個人の顧客に、GBAの資産運用サービスを提供するため、金融機関を裏側で支える事業だ。個人の顧客に対面でサービスを届ける地方銀行や信用金庫のほか、商品を提供する運用会社や証券会社に対し、システムや研修の場を提供している。
一貫する我々の理念は役割分担で、垂直統合ではなく、水平分業だ。それぞれが得意分野に集中し、ほかの分野を相手に任せれば、皆が幸せになる」
――なぜ、そのような枠組みとしたのか。
「全国の家庭に訪問して、人生計画に応じた運用方法を提案しようとすると、地銀や信金など、地域に密着した金融機関が欠かせない。商品を提供するのは運用会社や証券会社だが、GBAに沿ったシステムや業務の基盤が日本にはなかった。当社は、NTTデータのグループ会社と連携してGBAのサービス全体を設計した」
――サービスを取り巻く環境は。
「富裕層は大手対面証券を、若年から中年層はネット証券を使うことが多い。我々の主な顧客は、地域の金融機関が対面するシニアの方々だ。サービスを始めた当初は『資産運用にはGBAが必要』だと伝えても、金融機関に理解してもらえなかった。近年は金融機関との連携が増えつつある。たとえば、地銀は広島銀行や佐賀銀行、運用会社は野村アセットマネジメントや三井住友DSアセットマネジメントなど。数年後にはほとんどの地銀で、導入してもらえるようにしたい」