「本来の資産運用は将来に備えるゴールベースアプローチが必要」…日本資産運用基盤グループ・大原啓一社長
政府が進める「資産運用立国」の実現には、国民に金融商品を提供する資産運用業界の取り組みが重要になる。銀行や証券会社、運用会社を黒子として支える日本資産運用基盤グループの創業者、大原啓一社長に話を聞いた。(聞き手・市川大輔)
もうけ期待「投資」と混同
――事業に対する思いは。
「私がこれまでの経歴で抱いた問題意識に通じている。大学卒業後、調査研究機関で欧米の資産運用業界の調査を始めたことが、資産運用業界との出会いだ。日本でも資産運用ビジネスは普及すると感じ、日系の運用会社に転職した。3年後にロンドン勤務となり、7年半を過ごした。
ロンドンで感じたのは、当時の運用会社は、銀行や証券会社が日本の個人顧客向けに売りやすい商品を作らされているということだった。いつしか家族には『自分が作る商品以外の商品を買った方がいい』と話すようになった。
そんな時に、英金融サービス機構のアデア・ターナー元会長の本を読んだ。『金融はそれ自体に価値がある商品やサービスではない。今日は金融サービスを買いに行こうとはならない』と書いてあった。
融資や保険も含め、すべての金融サービスは将来、または現在、何かに使うお金を対象としたものだ。しかし、なぜ資産運用だけそう考えず、『お金を使ったらもうかる』といった話になってしまうのか。資産運用は、もうけが期待される機会に資金を投じる『投資』と混同されていたからだと思った。
本来の資産運用は、老後の生活資金や子どもの養育費など、将来に備える『ゴールベースアプローチ(GBA)』が必要で、投資とは区別されなければいけない。GBAは、単に投資商品を並べるのでなく、どんな備えが必要か、専門人材がサポートするサービスだ」
――ロンドン時代に大手運用会社を辞め、帰国して運用会社を創業した。
「国内で運用会社を経営すると、日本の運用業界の効率の悪さを目の当たりにし、別の問題意識を持った。欧州では世界中からお金や優秀な人材が集まり、2~3人でも運用会社をどんどん設立していた。