日本では判定や運営に不満も......。パリ五輪、各国の記者はどう見た?
大会前、フランス国内では多額の税金を投入して開催する五輪について反対の声も少なくなかった。だが、開幕後はそうした声も減少し、トラブルは最小限にとどまったと言っていいだろう。チケットの販売も好調で、史上最多を記録した。 「東京五輪も競技面や運営面は素晴らしかったが、コロナ禍での開催で無観客だった。それがパリでは天候に恵まれただけでなく、コンパクトで移動もスムーズ。 柔道はもちろん、普段はどの大会でも観客がいない馬術ですらベルサイユ宮殿が会場だったことでスタンドは満員。過去の大会では、せいぜい観客の入りは6割、7割だったのにね。やっぱり多くの観客がいる中で行なわれるのは最高だよ。 パリに観戦に来た多くのファンは単に自国の応援をするだけじゃなく、パリの街並みの中で偉大なアスリートたちが競演するショーを見に来ている感覚だったんじゃないかな」(前出・ボナミー氏) 例えば、日本が過去最多5つのメダルを獲得したフェンシングの会場は、なんとも荘厳な雰囲気の漂うグラン・パレだった。1900年のパリ万国博覧会のために建てられ、普段は大規模な展示会や美術展に使用されている。 スロバキアのネットメディア『Petit Press』のティターニャ・ボドヴァ記者も、自国の注目選手が出場している競技中心の取材をしていたというが、パリ五輪全体の印象についてはこう話した。 「スロバキアの人気競技といえば、カヌー、レスリング、陸上、ボクシングなど。何度も五輪を取材してきたけど、こんなに全体の雰囲気がいいのは初めて。 ベルサイユ宮殿やグラン・パレはもちろんだけど、エッフェル塔の下ではビーチバレーが行なわれ、コンコルド広場はスケートボードなどのアーバンスポーツが盛り上がっていた。 名所のそばで競技が見られるなんて最高だし、単なる競技の観戦というより、パリという都市と競技のつながり方がすごく魅力的で美しかった」 「映え五輪」。そんな言葉もぴったりかもしれない。 米『ロサンゼルス・タイムズ』紙のケビン・バクスター記者は、「大会前はテロへの心配もあったが、何事もなく大会は進んだ」とし、大会運営を評価した。 「よく運営されていて、移動などを含めて不満はない。会場の活用法がいいっていうか、その大会で一度しか使わないような建物をつくる代わりにもともとある場所を活用しているのが気に入ったね」 選手村でコロナ感染者が出るなど一部で残念なニュースもあった。だが、パンデミックが明け、華の都パリで人々の熱狂が再び戻ってきたことを印象づけた五輪だったとも言えるだろう。 取材・文/栗原正夫 写真/JMPA