【40代・50代の「医療未来学」】がんは「簡単に治せる」病気になる?
医療未来学の専門家として、話題の著書多数の医師・奥真也さん。医療未来学とは、5年・10年・30年先に登場する科学や医療技術を先読みし、評価する学問ジャンルのこと。なかでもOurAge世代が特に気になる病気や健康のことについて、最先端事情をわかりやすく教えていただいた。
未来を予測できるのはなぜ?
まず伺いたいのは、奥先生はなぜ、未来に起こる医療について正確な予測ができるのか?と、いうこと。 「僕は占い師ではありません(笑)。でも、なぜ先のことがわかるのか。書籍などを通じてお伝えしている、医療の未来予想の根拠は、Web上では公開されている既知のものだからです。 難しい病気を治すための技術開発は、ある日突然世に出るわけではありません。長い時間をかけて開発され、治験も行われる。その過程は論文や治験データベースで公開される。プロセスは実は、丹念にネット検索をすればわかることなんです」(奥先生) つまり、「そんな新薬が出たの?」と私たちが驚くようなニュースも、SFのことではなくて、「もう決まっていた未来」ということだろうか? 「そうです。医師としては、自分の健康を自分で守る範囲では、ぜひ皆さんには情報リテラシーを持っていただきたいとは思います。でも、多くの人が医療科学のプロセスやらテクノロジーやら、専門知識をいちいち調べるのは大変ですよね。なのでそこは私がわかりやすく答えたり、本を書いたりしますから、ぜひそれをお読みください」
がん治療に貢献するふたつの特効薬
著書『未来の医療年表 10年後の病気と健康のこと』(講談社現代新書、2020年)では、「2035年 がんの大半が治癒可能に」とあった。2024年現在の状況はどうだろう? 「『人はいつか死ぬ』という前提の上で言えば、がんの治癒については順調に、コントロールできるよう進化していると思います。ただし膵臓がんや胆管がんなど、根治が難しいといわれる一部のがんは、やはりまだ難しいまま、という状況ではあります。がんという病気の特徴として、進行が早い人、亡くなる人はゼロではありません。けれど全体として亡くなる人は激減しているし、余命も長くなり、がんになっても10年生きて、海外旅行にも行けた、といった話は多くなっています」 がんは、なぜ治せるといわれるようになってきたのだろうか。 「ひとつめのポイントは、がんは遺伝子の異常によって起こる病気という背景がはっきりわかったことですね。昭和の時代は、『遺伝も関係あるかもねぇ…』ぐらいで、お医者さんにとっても、『多くの人が一定の確率でかかってしまう怖い病気』という認識だったんです。