アルピーヌの新「電動ホットハッチ」は何がスゴい? “ルノー・スポール”との違いとは? 2026年に上陸予定 新型「A290」の実力とは
ルノー・スポール時代のモデルよりもフレンドリーにつき合える
「A290」の加速感は、かつてのBEVでよく見られた「ドカン!」と勢いよく走り出す加速自慢系ではなく、伸びやかさ自慢の味つけです。
アクセルペダルの踏み込み量に対する反応がリニアで、スムーズかつドライバーの意のままに加速をコントロールできます。コントロール性という意味では、「A290」のような味つけの方が加速自慢系のそれより優れているのはいうまでもありません。 そして、ワインディングロードからサーキットまで走ってみて実感したのは、「A290」のスポーツ性はかなりハイレベルだということです。 とはいえ、ルノー・スポール時代の「R.S.」シリーズのように、徹底的に切れ味を求めて鋭くした、刃物のような感覚とはちょっと違う印象。「R.S.」シリーズに比べて気軽につき合える、もっとフレンドリーな雰囲気を備えているのです。 例えば、「A290」の乗り心地は「R.S.」シリーズより優しく、シートなども徹底してドライバーを包み込む強靭な姿勢保持装置ではなく、適度な開放感も備えています。 そんなキャラクターは、「サーキットまではいかないけれど、たまにはスポーティに走りたい」という人にマッチすることでしょう。 胸がすくようなハンドリングで毎日の移動を楽しくし、移動中はドライビングを通じて楽しい時間を過ごせる。しかも週末はときどき、スポーツドライブを楽しめる「A290」は、そんな人々のライフスタイルにベストマッチの1台だと思います。 * * * BEVはエンジン車に比べると薄味の傾向にあり、なかには無味無臭といった印象のモデルも少なくありません。 しかし、ハンドリングやアクセルワークなど、クルマから伝わってくるインフォメーションがしっかりつくり込んである「A290」は、運転しているという実感が濃密で、しっかりとドライビングプレジャーを堪能することができるのです。 ひとまず、BEVということは忘れよう……。BEVだから、エンジン車だから、という枠組みを外して評価してみても、「A290」は一線級のホットハッチなのでした。
工藤貴宏