意図伝わらず「文章切り取りで炎上」なぜ起きるか 「誤答の並列化」を知ると、意図が理解できる
「文章を書くのが苦手」「何を書いていいかわからない」。そんな悩みを抱く人も多いのではないでしょうか。『一度読んだら絶対に忘れない文章術の教科書』を上梓した辻孝宗先生は、毎年東大合格ランキング上位に入る、全国屈指の難関校・西大和学園で国語を教えています。辻先生が文章の切り取りで炎上が起きる背景を解説します。 【写真】『一度読んだら絶対に忘れない文章術の教科書』(辻孝宗著)では、大人にも役立つ文章術を伝授 ■一部を切り取られて、発言が炎上 「前後の文脈から一部の発言だけを切り取るのは間違っている!」
こんな言葉を日頃耳にすることも多いのではないでしょうか。政治家の発言が炎上し、「そこだけ切り取ったらそういう発言に見えるかもしれないが、趣旨はまったく逆だ」と弁明する、なんてことはよくありますよね。 学校で生徒たちと接していても、「Aくんが自分にこんなことを言った!」「いや、自分はそういう意図じゃなかった!」というようなやり取りはよく見られます。 これらの現象は、とある文章のテクニックを知っている人と、知らない人の間でしばしば起こることです。国語の授業でそのテクニックを習っている人であれば、こうしたコミュニケーションでの行き違いは発生しないのです。
今回は、文章を書いたり読んだりするときや、人の話を聞くときにも使える、「誤答の並列化」というテクニックをご紹介したいと思います。 まずは、この文章を読んでみてください。 なぜこの店は繁盛しているのだろうか? 立地が良いのか、と考えると、そうではないとわかる。ここはとても辺鄙な場所にある。広告を打って人が多く集まっているのでは? と考える人もいるだろうが、そんなことはしていない。それなのになぜ、この店はたくさんのリピーターがいるのだろうか?
その答えは、味だと私は考える。 これは、「なぜこの店は繁盛しているのか」という問いを持ち出しつつ、その答えが「場所」や「広告」ではないということを先に示し、満を辞して「味」という本当に伝えたかったことを最後に持ってきています。これは、問いかけに対して、あえて間違った回答を挟み、「誤答の並列」をすることで、正解を際立たせる手法なのです。 誤答の並列化 「Q1 この問いの答えは?」 「Q2 この問いの答えはAか?」「A2 違う」