サーブ 9-3Xは派手さはないが、よくできたクロスオーバーSUVだった【10年ひと昔の新車】
たっぷりとしたストロークで、フットワークはしなやか
運転席に座ると、アバンギャルドな外装とは異なり、シックな北欧風テイストの室内となる。基本的には9-3セダン/エステートと変わりがない。シフトレバー手前にあるシリンダーにキーを挿し込み、捻ってエンジンを始動する。 速度計の右隣にある「TURBO」メーターがブースト圧を高らかに表示するが、低回転から穏やかに効くタイプで、アクセルペダルの踏み込みに対してごく自然にパワーが盛り上がっていく。クセがなく扱いやすい性格の持ち主だ。 フットワークは非常にしなやか。たっぷりとしたストロークがあり、首都高速を走行しても路面段差での突き上げがほとんどない。ワインディングでは、ゆっくりとしたロール感を与えながらも軽やかな走りまで披露する。 そうしたよく動く足を持ちながら、速度を上げれば上げるほど安定感が増していき、高速域では非常に落ち着きのある走りを見せるのがいい。6速ATの100km/h時の回転数は1800rpmで、静粛性も高く高速巡航は大の得意と言える。 個性的で魅力あるモデルだが、不満点もいくつか。右手側を押すとシフトアップ、左手側を押すとダウンのステアリングシフトも標準装着するが、シフトレバーをDレンジから左に倒してMモードにしないと機能せず、Mモードにすると完全にマニュアルシフト操作を求められるのは他の9-3シリーズとも共通なのだが、やはり扱いづらい。 近年主流となる小排気量+過給エンジンとは出自やコンセプトが異なるためか、欧州総合燃費で9.9km/L、高速道路走行が全体の約8割だった今回の試乗では8.8km/Lとなった。 9-3Xを皮切りに、まもなくフラッグシップとなる新型9-5セダンも日本上陸。さらに2011年中に新型9-5エステートや9-4X、12年には新型9-3と、ニューモデルを続々と投入する予定のサーブ。今後の動向にも注目したい。(文:Motor Magazine編集部 /写真:井上雅行)
サーブ 9-3X 主要諸元
●全長×全幅×全高:4690×1800×1570mm ●ホイールベース:2675mm ●車両重量:1680kg ●エンジン:直4DOHCターボ ●排気量:1998cc ●最高出力:154kW(209ps)/5300rpm ●最大トルク:300Nm(30.6kgm)/2500rpm ●トランスミッション:6速AT ●駆動方式:4WD ●車両価格:520万円(2011年当時)
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