融解しつつある世界秩序の中の日本の戦略
イスラエル=ハマス紛争を伝えるアル・ジャジーラ(同局HPより)
10月7日、パレスチナのイスラム組織ハマスが、ロケット弾などを用いてイスラエルへの 大規模な攻撃を開始 した。これを受けて、イスラエルもまた報復に踏み切った。また、前月の9月19日には、アゼルバイジャンが隣国アルメニアとの間の係争地となっていたナゴルノ・カラバフに対して、「対テロ作戦」を開始して、翌日にアゼルバイジャンのイルハム・アリエフ大統領が同地での主権を回復したことを宣言した。 中東とコーカサスという、それまで長年対立が見られ紛争が膠着状態にあった二つの地域で、多くの死者を伴う軍事衝突が勃発した。そしてそのことが、すでに緊張と対立があふれる世界秩序において、さらなる不安をもたらしている。 これらは、2022年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻と、はたしてどのような連関があるのだろうか。それを理解する背景として、いくつかのことを考慮に入れる必要があるだろう。第一に、 ロシアの力 の後退である。ウクライナで大規模な軍事行動を開始したロシアは、当初は数日でその「特別軍事作戦」を終わらせるという楽観的な見通しを立てていた。ところが、1年半を経過しても戦闘の終結に目途が立たず、膨大な国費を軍事費に費やすとともに、国際社会からの経済制裁によって半導体などの先端技術を用いた部品や製品の輸入が困難となっている。ロシアが、国力をウクライナで大きく浪費するなかで、その周辺に位置するアゼルバイジャンやアルメニアでの 影響力が大幅に後退 している。さらには、中央アジアでもロシアの影響力の後退によって、中国がそこでの力を拡大する。
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細谷雄一