EVか内燃機関車か 清水草一の自動車10大ニュース 2位は自動車の未来を左右するあの話題
欧州での失速と日本での伸び悩み
2024年に様々な出来事が自動車業界では巻き起こりました。その中から、自動車ライターの清水草一氏の記憶に残った10個の話題を、「清水草一の自動車10大ニュース」と題してランキング形式でお伝えしています。3位のガソリン価格に次いで2位に入った話題とは……。 自動車ライターの清水草一氏が選ぶ2024自動車10大ニュースの第3位はコチラ ◆タダのクルマ好きが選びました ただのクルマ好きが選んだ、2024年自動車関連10大ニュース。ついにあと2つ! ◆第2位 世界的にBEV販売の伸びが失速 私を含む内燃エンジン・ファンが、思わずニヤリとするニュースだった。 日本のクルマ好きの多くは、電気自動車=バッテリーEV、すなわちBEV(あるいはBEV推進派)に対して、反感を抱いている。正義顔して、我々が愛する内燃エンジン車を悪者扱いするのが我慢ならないのである。 ◆BEVの鈍化とeフューエル 実際、つい数年前までは、内燃エンジン・ファンにとって、BEVは明らかに敵だった。BEVの普及によって、間もなく内燃エンジン車は消滅する(させられる)と言われていたからだ。 しかし状況は変わった。3年前、ポルシェは「カーボンフリーのeフューエルを生産・供給する」と表明。現在はまだガソリンの10倍レベルの価格だが、いずれ3倍程度まで下がるとも言われているので、少なくとも趣味車としての内燃エンジン車は、存続が確実視されるようになった。ホッ。 今年に入ると、BEV販売台数の伸びの鈍化が鮮明になり、そこに経営資源を集中させていた欧州メーカーの苦境が伝えられた。 我々内燃エンジン・ファンは、一度は崖っぷちに追い詰められた気分だったが、現在は激しく巻き返しつつあり、勝利の美酒に酔っている。 ◆BEVを強要されているわけではない 思えば日本の自動車ユーザーは、誰かに「BEVを買え!」と強要されているわけでもなんでもない。中国や欧州各国の政府がいかにBEVを推進しようと無関係だ。しかも、BEVの性能が内燃エンジン車を明らかに上回った時は、手のひら返しでBEVに乗り替えることだってできる。絶対的に有利かつ安全な立場にいるわけだ。 そんな安全地帯にいる我々は、今やBEV派メーカーに対して、「無理に急ぐから、そんなことになるんだよ」と、憐れみすらかけている。 ◆日本ではBEVのシェアが低下 日本では、2024年に入って、BEVの新車販売シェアが下落している。2023年は2,21%まで伸びたが、2024年(1~9月)は1.62%に下がった。 実際日本では、ガソリンスタンド過疎地帯に住んでいるなどの事情がない限り、あえてBEVを買う理由はあまりない。もちろんBEVのスムーズでトルクフルな走りは素晴らしいが、今のところ、「なんでわざわざそんな不自由なものを買わなきゃならないの」という気持ちのほうがはるかに上回る。 ◆自動車産業は大丈夫か それにしても日本は、EV不毛の地である。欧州でも支援策の縮小等により、BEVの新車販売シェアは微減傾向にあるが、日本の10倍のシェア(約15%)は維持している。ガソリンが先進国中最も安いアメリカですら約8%だ。中国の約23%は無視するにしても、日本のBEV普及率は、他の自動車大国に比べて、あまりにもブッチギリで低すぎる気がしないでもない。内燃エンジン・ファンの私が言うのもなんですが。 日本は販売の約95%が国産車の国。そういう国でこれほどBEVがダメなのは、ひょっとして国産BEVがダメすぎるからではないか? 輸入車に限れば、日本でもBEVのシェアは約8%になっているので。 今はHV(ハイブリッド)やPHEV(プラグイン・ハイブリッド)が世界的に好調なのでいいけれど、10年後、15年後の日本の自動車産業は大丈夫か。崖っぷちに追い詰められてやしないかと、心配になったりする。 文=清水草一 (ENGINE WEBオリジナル)
清水草一