日大の第三者委が最終報告(全文1) アメフト部は内田監督の独裁体制だった
教学ラインに位置付けられたスポーツ推進支援センター新設を
日大の事後対応の最大の問題は、大学として早期に事実調査、真相解明に取り組むことなく、本件をアメフト部の問題と矮小化し、長期間、内田氏らに対応を任せたことであります。そうなった原因の1つに、内田氏がアメフト部、体育局の中で独裁体制を敷いていたこと、内田氏が人事担当常務理事、人事部長という要職を兼任していたことなどが挙げられます。その意味で日大が提出したチーム改善報告書にも兼職禁止について触れられており、私どもの最終報告書でも競技部監督とその上位機関幹部等との兼職禁止を提案しています。 しかしこの2カ月間の調査、アメフト部での危険タックル事件に発した今回の一連の出来事を調査する過程で、ガバナンスの問題は兼職禁止ということだけにはとどまらないということが分かりました。私どもの問題意識と改善策の詳細は最終報告書に記載したとおりですが、かなり多岐にわたりますので、その中で特に3点だけ取り出して説明いたします。 第1は、日大アメフト部に対するガバナンスが利いていなかったという問題はアメフト部に限らず、日大の他の競技部にも言えることであり、あるいは日本の多くの大学の競技部に共通する問題であり、抜本的な対処が必要であるということについてです。2011年のスポーツ基本法制定以来、大学をスポーツの場としてハード、ソフト面から整備していこうという議論が活発になっています。他方、大学の競技部の多くは大学の組織に明確には位置付けられておらず、その運営も各競技部に委ねられ、責任体制は不明確です。日大アメフト部も保健体育審議会に所属している形になっていますが、保健体育審議会に実体がない故、その位置付けも曖昧で教学ラインにきっちりとはまっていません。 もう一度、先ほどの表を見てください。学長は形骸化している保健体育審議会の会長というだけで、保健体育審議会あるいは体育局から学長につながる線が不明瞭なのです。それ故、アメフト部の問題について学長はじめ、教学ラインの関係者の当事者意識は極めて乏しく、大学としての対応が遅れる一因となりました。 これからの大学スポーツは課外活動というだけでなく、大学という教育機関において公共的役割を果たす教育活動としても位置付けられていくべきです。そのためには大学競技部の大学での位置付けを明確にし、競技部全般に対し、平素から大学としての責任体制、指導体制を整える必要があります。私どもの最終報告書では日大の保健体育審議会と体育局等を組織改編し、学長の下で日大の教学ラインに明確に位置付けられた、仮の名前ですが、スポーツ推進支援センターの設置を行うことを提案しています。そして、そこには内田体制下で見られたような、選手を上から押さえつけるようなスパルタ指導ではなく、選手の自主性を尊重しながら、選手の人間としての成長に寄与できる指導を競技部に求めることのできる外部人材を登用することを提案しています。今の体育局のままでは抜本的な改革は難しいと思っています。 大学スポーツ改革については、スポーツ庁でも様々な議論がなされており、すでに改革に着手している大学もありますが、日大は日大に合った抜本的改革を行ってほしいと願うものであります。過小ですが、スポーツ推進支援センターの設立はアメフト部を含めた、日大競技部のガバナンス向上のための私どもの処方箋です。 【連載】日大の第三者委が最終報告(全文2)へ続く