渋谷“若者の街”ではなくなるのか? 「年末カウントダウン5年連続中止」の先にある“着地点”
外国人に愛される街へ
確かに、“いまの渋谷”は新しくできた高層ビルで洗練された空間を楽しみつつ、一歩外へ出れば路面の店舗がにぎやかな商店街とシームレスにつながっており、飽きずに街の多面性を感じながら散策を楽しめる。先端都市の洗練さと昔ながらのごちゃごちゃ感。この2つを同時に楽しめる街なみは、かつての風景を知らない外国人にとってはより新鮮で、魅力的なのだろう。 多くの外国人が訪れることは、渋谷区も歓迎している。区が目指すのは、ロンドン、パリ、ニューヨークなどと並び称されるような「成熟した国際都市」。その実現のための価値観として、「ダイバーシティとインクルージョン」を掲げ、人種、性別、年齢、障害を越え、渋谷区に集まるすべての人の力が街づくりの原動力になると考えている。 そうしたなか、この数年でインバウンド回復に伴う訪日外国人が急増し、路上喫煙・飲酒が問題となる。23年にはそうした行動を規制する、公共の場における飲酒禁止条例が施行された。 外国人観光客の路上などでのマナー違反が目立つことによるやむを得ない決断だが、これまでの区の方針にのっとれば違和感はぬぐえなかった。この点について、同組合は温かい視線を送る。 「インバウンドによる外国人の多くの来街は大変ありがたく思っています。マナーに関しても大概の外国人は常識の範囲では問題ないと感じます。 ただし、異国の地ではどうしても開放的になりがちです。その自治体の法律や条例を知らないという点もありますが、歩行喫煙や路上飲酒をする方はおられます。 といっても、注意をしたらすぐにやめる方が多いです。むしろマナーについては国や自治体が外国人に対して法律や条例をもっと知ってもらうようアピールしていくことが効果的だと思います」
ハロウィーン騒動はなぜ問題か
渋谷の治安維持にも尽力する同組合が問題視するのは、それよりもハロウィーン関連の騒動だという。 「ハロウィーン騒動に関しては、初期の頃(まだそんなに酷くない頃)から寛容だったわけではありません。むしろ嫌悪感を持っており、根の小さい段階から行政に対して進言していました。ですから、雑踏事故防止における警備体制に関しては初期の頃から渋谷は完璧であると思っています。 しかし、ハロウィーン騒ぎを目的として来街される人が年々多くなるにつれ、さまざまな問題(路上飲酒が原因によるトラブル等)が起き、商店街で心配していた通り、デメリットしかなくなってしまったのです。そこで条例ができたのですが、秩序が乱れた状態を規制して正していくのは当然の事。われわれ商店街としては、ハロウィーンの10月31日が元の状態に戻り、一般の方々が普通にその日に渋谷に来られるようになることを願っています」 いつから渋谷は“騒いでもいい街”と捉えられるようになってしまったのか…。2002年の日韓W杯では、日本代表の活躍に押されるように、フェイスペイントにユニフォームを着用した人などが渋谷に大量に押し掛けた。新宿でも池袋でもなく、吸い寄せられるように群衆は渋谷を目指した。 ハロウィーンが渋谷で大々的に行われるようになったのは2009年頃といわれている。なにかきっかけがあれば、騒ぎたい人が集まる。そんな空気が、イベントとして一つの形に集約された。それがハロウィーンだったのかもしれない。