【トップに聞く 2024】アダストリア 木村治社長 過去最高業績の先に見るもの
ー再上陸1年目ということで、取り組んでみて初めて見えてくるものもありますよね。 そうですね。ただアダストリア全体の傾向として、新ブランドの立ち上げ時って大体苦戦するんですよ(笑)。グローバルワークも上手くいかずに何度かリブランディングしているし、ラコレや韓国発セレクトショップ「エーランド(ALAND)」も紆余曲折を経て安定して収益化できるまで成長しました。この「修正力」はアダストリアの強みの一つだと思っているので、フォーエバー 21に関しても長い目で見ながら、現場やお客様の声を参考にブラッシュアップしていきたいなと思います。 ー3月1日には、フォーエバー 21をはじめとするライセンス事業のための子会社 ゲートウィン(Gate Win)を吸収合併しました。 ゲートウィンを通じてライセンス事業を展開するなかで「今後ライセンス事業はアダストリアのビジネスの核になり得る」と感じたのですが、同時に交渉から店舗運営までをアダストリア内で一本化して行う方が業務の効率化などの意味合いでも会社にとってメリットが大きいなと。今後はゲートウィンで培った事業展開の知見やノウハウを取り入れて、更にライセンス事業を発展させていきたいですね。 ーライセンス事業の新しいパートナーとして注視しているブランドがあれば教えてください。 現時点でお伝えできることはないですが、海外を飛び回りながら様々な話し合いはさせていただいています。もちろんアダストリアにフィットするかどうかといった問題はありますが、こればかりはやってみないと分からないところではあるので「ダメだったら仕方ない」といったマインドで積極的に挑戦していきたいなと。 ーフットワークが軽いですね。 迷った末に行動せず、他社で成功してしまったらすごく後悔すると思うので、まずはとにかく挑戦。ダメだったら修正すればいいし、どうしても難しかったらその事業をやめてもいいんです。身を引く時の決断の速さもアダストリアの特徴ですね。どうせやめるなら早くやめた方が次の事業の準備に時間をかけられるし、人材の無駄遣いをしなくて済みますから。 ーライセンスブランドだけでなく、引き続きオリジナルブランドも新たに展開していく? もちろん。今後もマーケットのニーズを見ながらチャンスがありそうなら積極的にブランドを展開していきます。 ーアダストリア内で木村社長が期待しているブランドは? 先ほど2024年2月期で売上を伸ばしたと紹介したラコレは、海外展開を進めることでまだまだ伸び代があると思っています。手近な目標で言うとまずはアジア進出からですが、2月にはニューヨークで開催された雑貨の展示会にラコレを出展したりと、欧米展開も見据えて準備を進めている段階です。 ー国内雑貨市場は「オーサムストア(AWESOME STORE)」が全店閉店したほか、「ダイソー(DAISO)」の300円ショップ「Standard Products」が店舗数を拡大するなど競争が激化しています。 先日のオーサムストアさんの閉店もそうですが、現在の雑貨市場はレッドオーシャンなので、ある程度淘汰されていくんだろうなとは思います。ただ、アダストリアブランドが展開している雑貨は全てファッションを絡めているという点で他社さんと差別化できているので、まだまだ事業拡大のチャンスはあるなと。高単価の雑貨領域に参入するのも一つの選択肢だと思いますし、今後もアパレル一本でない雑貨複合型ファッション企業として成長していきたいですね。