ラグビー全国大学選手権V4へ 帝京大を率いる青木恵斗主将の矜持
【ベテラン記者コラム】関東大学ラグビー春季交流大会は、帝京大が3年連続10度目の優勝を決めた。16日は敵地・上井草に出向き、早大と対戦。早大はHO佐藤健次主将、FB矢崎由高の大駒2枚を日本代表合宿などで欠いたが、明大相手にスクラムを押し込むなど、FWを中心に成長ぶりが見てとれる。そんな相手と、どんな戦いを見せるか、楽しみにしていた。 結果は60-7。全国大学選手権4連覇を目指す赤いジャージーが圧倒した。強みはやはりフィジカル。それを体現したのがFL青木恵斗主将だった。 前半7分、早大ゴール前でボールを持つと、タックルをものともせずに先制トライ。19分には相手ゴール前で得たPKを自らタップキックして2トライ目。後半36分には早大のタックラー4人を弾き飛ばしてインゴールへ飛び込み、3トライをマークした。 「ハットトリックは高校(桐蔭学園)3年の(花園3回戦)仙台育英戦以来です」 鮮明な記憶を語り、「優勝して春を締めくくることができてよかった」と笑みを浮かべた。 実は、ボールキャリーに迷っていたという。これまでは、スペースに向かって斜めに走ることが多かった。帝京大グラウンドに、OBのCTB森谷圭介(東京SG)が訪れたとき、アドバイスをもらったという。 「スクエアに走ることが大事、ということでした」 ゴールラインに垂直に走る。明大の総帥だった故北島忠治氏の「前へ」に通じるものだが、青木の場合は、ただまっすぐ走るだけでなく、相手と当たる寸前にわずかにステップを切る。「相手がずれてくれれば、僕の方が強いのでそれだけ前に出られる」。後半の〝4人飛ばし〟をはじめ、この日の3トライは「スクエア」の意識をしっかり持っていた。 桐蔭学園高ではLOとして花園2連覇を果たし、帝京大に進むと、当時の岩出雅之監督が「第3列で日本代表に」とFLにポジションチェンジ。そのもくろみ通り、この2月にスタートを切った「第2次エディー・ジョーンズ体制」で日本代表候補入りした。イングランド代表戦のスコッドには入らなかったが、青木本人はより帝京大にコミットできることを歓迎している。 帝京大の相馬朋和監督は、日本代表のスキルやメンタルを肌で感じてきた青木について、「練習の質が変わった。これまで雑にすませてきたことを、丁寧にやるようになった。タックルも、ブレークダウンも低い姿勢で入るようになった。力で何とかしようという考え方から、スキルを重視するように変わった」と評した。
春シーズンを締めくくった早大戦。「楽して勝てる相手はいない。相手が折れるまで体を当て続けるという、帝京大のプライドを全員が発揮できたのは大きい。夏合宿では全勝して、対抗戦開幕までにチームを仕上げたい。タイトルは全てとりたい」。野望を語る青木が、帝京大をV4に加速させる。(田中浩)