人間よりも低コストで「NOスキャンダル」!? しまむら、伊藤園…企業がAIタレントを使うメリットは? 今後活用は増えていく? 専門家が解説
◆人間よりも低コストで「ノースキャンダル」
塚越:お茶のCMで使われたAIモデルは、「30年後の自分と、今の自分が別人に見えないように、きれいな年齢の重ね方をしよう」という内容を表現するためにAIタレントを起用しています。 しまむらもお茶のCMのAIモデルも、どちらも「AI model」という会社が作成しています。この会社は3月から三越伊勢丹と協業して、ECストアで専用のAIモデルを提供しています。 このように、AIを利用した広告は今後も広がっていくとみられています。非常にクオリティが高いからこそ広がっているということですよね。 吉田:メリットとしては何があげられますか? 塚越:しまむらによりますと、今回AIモデルを起用した理由は10代~20代の若い女性客の取り込みや、変化の速いファッショントレンドに迅速に対応するといった目的があります。AIはスケジュール調整や撮影時間がかからないこともあり、人間よりコストを抑えつつ、より見せたい広告を展開できるということです。 もっと言うと、AIモデルはスキャンダルを起こさないし、SNSで変なことを言いませんよね? 中国では、AIモデルやデジタルヒューマンが日本以上に普及しており、バーチャルアナウンサーやバーチャルインフルエンサーが、イベントの司会やニュースを放送しています。また中国では、特に政治的発言に関して日本よりもセンシティブなので、人間よりAIモデルが求められる傾向にあります。 ユージ:とにかくAIはノースキャンダルなので、そこは大きいかもしれませんね。
◆昨年6月にはAIグラビアアイドルの写真集が発売中止に
ユージ:AIモデルというと、去年6月に集英社が「さつきあい」というAIグラビアアイドルの写真集を発売しましたが、およそ1週間で発売中止になったことも記憶に新しいですよね。 塚越:さつきあいは、「実物のアイドルに似ているのではないか?」という点が問われました。生成AIで人物の画像を作成する際、学習元には現実の人間の写真や映像が必要です。証明するのは難しいですが、現実の人間をどれくらい学習させているのか、どういうふうに人間の画像が使われているのか、著作権・肖像権の問題はどうなっているのか……などが問われました。 他にも、人間のタレントやカメラマンの仕事を奪うのではないか? など、法律だけでなく、社会的な倫理の問題も問われたこともあり、集英社はこうしたAIの課題に関する検討が不十分だったということで発売中止にしました。この問題もあって、生成AIの利用ルールなどについて注目が集まりました。