大東文化大学法学部が、総合型選抜の課題論文になる探究プログラム(高校生向け)を実施~記者が実際のプログラムを取材
値段の高いモカブレンドコーヒーを持ち出すのは窃盗罪
プログラムのステップ1は、事前の予習動画の視聴だ。大学で刑法を教えている山本紘之教授が予習動画を担当し、法的な考え方を参加者は学んでいく。 紛争が起きた時に、法という普遍的なルールによって解決していく考え方を「法の支配」という。 まず、今回の事例が刑法のどのような罪に当たるのかを説明する。刑法は犯罪と刑罰に関する法律である。犯罪には強盗や横領、詐欺、殺人などがあるが、今回の事例は窃盗罪に当たる。モカブレンドコーヒーは店主が占有しているものであり、それを隙をついて奪い取ったからである。 この際、暴行や脅しなどの方法で奪い取る強盗や恐喝などとの違いも説明される。イラストも交えて、かみ砕いたわかりやすい説明だ。この講義を踏まえて、参加者は当日の課題探究プログラムに取り組む。
就業規則に基づいた処罰とはいえ重すぎるか
一方、職場私立中学校Aは、労働基準法に基づいて就業規則が設けられ、それに違反すると懲戒が課される。懲戒は、戒告→譴責→減給→出勤停止→降格→諭旨解雇→懲戒解雇と重くなっていくと説明され、生徒たちはノートに書き写していく。みな講義に集中している様子が印象的だ。 Xの勤務先の私立中学校では「他人の財物を窃取した者は、免職又は停職とする」と就業規則にあり、それに基づいてもっとも重い懲戒解雇となった。これが妥当か否かを議論することになる。 講義が終わると午後のグループワーク「ポスターセッション」についての説明がされた。発表者が調査・研究の成果や取り組んでいることなどを1枚のポスターにまとめて書き、そのポスターの前で発表を行う。発表では、聞き手からの質問はなしとする形式だ。 終了後にグループ分けでA班からG班までが結成され、初対面同士が挨拶。その後、昼休みに入ったが、お弁当を広げながら「たった数百円の窃盗で懲戒解雇は重すぎるよね」「教務主任として学校にも貢献してきたことも加味すべきだ」と議論を白熱させる参加者たちもいた。