甲状腺疾患があっても妊娠できる? 妊娠した時に気をつけることは?【医師解説】
妊娠した女性は、自分と赤ちゃんの健康を守るために、考えなければならないことがたくさんあります。なかでも甲状腺疾患を持つ女性が妊娠した場合、母子の健康を守るために特別な配慮が必要です。 【イラスト解説】「バセドウ病」「橋本病」のセルフチェック方法 そこで、甲状腺の役割や疾患、そして、甲状腺疾患の患者さんが妊娠した際に気をつけるべきことについて、「そのだ内科 糖尿病・甲状腺クリニック渋谷駅道玄坂院」の薗田憲司先生に解説してもらいました。
甲状腺の役割ってなんなの? 医師が解説!
編集部:甲状腺について教えてください。 薗田先生:甲状腺は首の前部に位置しており、羽を広げた蝶のような特徴的な形をした内分泌器官で、体の代謝を調節するホルモンを分泌しています。甲状腺で分泌されるホルモンを総称して「甲状腺ホルモン」と呼んでいます。 編集部:甲状腺ホルモンはどんな働きをしているのですか? 薗田先生:代謝を調整したり、体温を調整したり、心血管系の機能を維持して心拍数や血圧の調整にも関与していたりします。また、子どもの成長や脳の発達にも不可欠なホルモンです。 それに加えて、女性の場合は妊娠の成立に大きく関わりがあり、甲状腺ホルモンが過多になったり過少になったりすることで、月経不順や無排卵などの症状が表れ、不妊や流産を起こしやすくなると考えられています。 編集部:甲状腺がうまく機能しなくなると、どんな病気になるのですか? 薗田先生:甲状腺の機能が低下するか亢進するかで、症状も変わってきます。また、甲状腺に腫瘤(こぶのようなもの)ができることもあります。
甲状腺の疾患にはどのようなものがある?
編集部:もう少し詳しく教えてください。 薗田先生:甲状腺ホルモンの働きが弱まることで様々な症状が表れる「甲状腺機能低下症」は、足がつりやすい、疲れやすい、皮膚が乾燥してかゆい、むくみやすい、体重が増えるなどの症状が表れます。 甲状腺機能低下症には、甲状腺そのものに問題がある原発性のものと、甲状腺にホルモン分泌の指令を送っている下垂体というところに原因がある中枢性のものがあり、原発性のもののほとんどが「橋本病」です。 編集部:甲状腺の機能が亢進しても症状が出るのですか? 薗田先生:そうですね。甲状腺ホルモンが分泌されすぎても、様々な症状が表れます。甲状腺ホルモンの分泌が過剰になる疾患の代表としてバセドウ病があり、主な症状には、発汗過多、食欲亢進、疲労、体重減少、手指のふるえ、動悸、眼球の突出などがあります。 イライラしやすいなど精神的症状が表れることもあり、実際に心療内科や精神科から紹介されて当院を受診する患者さんも少なくありません。 編集部:腫瘤ができるとどうなるのですか? 薗田先生:腫瘤ができていると言われると、心配になってしまう方も多いと思いますが、甲状腺の腫瘤の95%は良性のもので、特別な治療が必要なものはあまりありません。 また、たとえ悪性の腫瘍だとしても、甲状腺のがんは一般のがんより進行がゆったりとしているので、手術で根治できることがほとんどです。 編集部:甲状腺腫瘤の症状はありますか? 薗田先生:甲状腺の腫瘤は、ときに首の腫れやのどの違和感、飲み込みにくさなどで受診される方もいますが、ほとんどの場合自覚症状がありません。乳がん検診などの超音波検査で見つかるケースが比較的多いです。