17年前の川上憲伸と重なる…DeNAの中軸を内角で攻め倒したソフトバンク有原 “与四球2の中身”に大きな意味
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って 日本シリーズ特別編 ◇26日 SMBC日本シリーズ2024第1戦 DeNA3―5ソフトバンク(横浜) 完勝が辛勝に変わりはしたが、逆転は許さない。日本シリーズ13連勝のソフトバンクは、打率に総得点、本塁打…。ほとんどの部門でリーグトップの最強打線だが、今季は四球(436)と三振(1085)も最多だった。 勝敗を分けた投手・有原の先制打。2死二、三塁から、DeNAは甲斐を申告敬遠して塁を埋めた。まだ2回とはいえ、普段は打席に立たないパ・リーグの投手(有原は16打数2安打、10三振)。そしてDeNAは巨人を倒したクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージで、5度申告敬遠をやり、全て成功していた。痛打は浴びたが、当然の策。ただ、この好機は1死から栗原がもぎ取った四球から始まっている。2球で追い込まれたが、ジャクソンの150キロ超のストレートと変化球を見極め、7球目のチェンジアップにバットを止めた。 「対戦が少ないし、特殊な球を投げる投手。ああやって四球を取れたのは大きかったです」 近藤に代わって任された5番で、9回には適時打も放った栗原は、先制打を呼んだ四球を素直に喜んだ。有原が打てたのは「結果」だが、その「過程」は最強チームが築いてきた強さそのものに映った。 ジャクソンは有原に打たれた次の柳田から、日本シリーズタイ記録となる5者連続奪三振。しかし、ソフトバンクの打者は三振を恐れてはいなかった。計12三振を奪われながら、8四球(うち敬遠3)をもぎ取ったのだから。 一方でソフトバンク・有原は4三振で、与四球は2。数も大事だが、その中身に意味があった。いずれも4番・オースティン。逃げていたのではない。6回は徹底した内角へのツーシーム攻めで、最後はオースティンがにらみつけていた。中日が4勝1敗で日本一になった2007年。勝利の余韻に浸りながら、落合監督が「あれがエースのピッチングだ」とたたえたのが、唯一負けた第1戦の川上憲伸だった。次戦以降を見据え、相手の中軸を内角で攻め倒す。有原の投球を見て、17年前の「隠れた勝因」を思い出した。
中日スポーツ