エミー賞「将軍」に聖地・太秦のノウハウ…監修の映画監督・原田徹さん「ようやく世界が認めてくれた」
米テレビ界最高の栄誉エミー賞で今秋、史上最多の18部門を受賞したハリウッド時代劇「SHOGUN 将軍」は、時代劇の聖地・京都太秦のノウハウが生かされ、制作された。撮影に携わり、京都を拠点にする映画監督の原田徹さん(69)が読売新聞のインタビューに応じ、「ようやく世界が認めてくれた」と語った。(西田大智)
10か月間
原田さんは、SHOGUNの撮影で2021年8月から約10か月間、ロケ地のカナダ・バンクーバーに滞在。「テクニカル・スーパーバイザー」として、各シーンが時代劇として適切か監修した。小道具の位置や役者の動線、所作を助言し、日系人のエキストラには正座やすり足も指導した。
太秦では、長くフリーの助監督として、旧大映京都撮影所のスタッフらが設立した「映像京都」(解散)を中心に活動。映画監督の深作欣二や五社英雄らの作品に関わり、自身もテレビ時代劇「必殺仕事人2009」など多くの作品を手がけてきた。
SHOGUNの撮影では自らの経験が尊重されず、もどかしい思いもした。外国人スタッフはどこでも鎧(よろい)を着せたがった。さらに城中で小刀しか差さない侍が大刀を差し、床の間の花入れにも花を飾ろうとした。「わびさびみたいなものが伝わらない。当初はぶつかりもした」
一方、ハリウッド式の撮影に刺激も受けた。「大坂城を再現した大広間のセットも京都では建てられない大きさだった」と振り返る。
スケールの大きさ
全10話の撮影後、再び1話目から足りない場面の撮り直しが始まり、滞在は予定より2か月ほど延びた。「必要な部分を撮り直すだけなら、日本では数軒だけだが、50軒の村を全部一から組む。絶対映らへんでって言うんやけど。お金のかけ方が違った」
SHOGUNには、セットに天井を作らないなど日本の時代劇ではあり得ない演出や撮影手法も見られるが、「自分の経験は伝えられた。西洋人の目を通してはいるが、あそこまできちんとやった時代劇はなかなかない」と胸を張る。