ついに発売をむかえる「アライ」だが、じつは世界ではもっと進んでいる「肥満薬」の「スゴすぎる現在」
4月8日、大正製薬から内臓脂肪減少薬『alli(アライ。以下アライ)』が発売になる。アライは新薬ではなく、1997年8月にアルゼンチンで発売され、以降100カ国以上で承認されてきた、いわば枯れた薬だ。すでに安全性や問題点も洗い出されているので安心であり、そうした背景もあって日本では医療用ではなく薬局等での一般販売となる。 【マンガ】カナダ人が「日本のトンカツ」を食べて唖然…震えるほど感動して発した一言
脂肪の吸収を阻害する抗肥満薬
アライの主成分オルリスタットは脂肪を分解する酵素リパーゼの働きを阻害し、脂肪を腸から吸収させない。だいたい25パーセントの脂肪が吸収されずにそのまま排せつされる。 脂肪分25パーセントカットは抗肥満効果があり、200名を対象として行った24週=半年間の試験で、腹囲はマイナス2.49センチ、内臓脂肪面積は14.1パーセント減少したそうだ。120名対象とした52周の試験では、腹囲マイナス4.73センチ、内臓脂肪面積マイナス21.52パーセントいう結果が出ている。 アライは食欲は変わらず、栄養の吸収を妨げる薬だ。食欲が変わるわけではなく、すでに体についている脂肪を落としてくれるわけでもない。そして副作用がある。脂肪を吸収しないので、脂肪がそのまま出てくる。ようは漏れるのだ。アライに関してはオムツをする話まで出ていて、会社勤めの人には厳しいものがありそうだ。希望する人は薬局の人とよく相談してからじゃないと、尊厳に関わる事故が起きそうである。 脂肪分カットのオルリスタットに対して、今、世界の抗肥満市場で注目されているのがグルカゴン様ペプチド-1 =GLP-1薬である。GLP-1薬は学術界で絶大な信頼があるサイエンス誌で、2023年ブレイクスルー・オブ・ザ・イヤーに選ばれた画期的な薬だ。
究極のやせ薬か? 世界が注目のGLP-1
GLP-1を利用した薬剤が登場したのは2005年(※1)。2型糖尿病の薬として登場、なんとドクトカゲの毒から作られた薬だった。その後、ノボ ノルディスク ファーマ社がセマグルチドを発売、糖尿病であるとともに抗肥満薬としても認可を受ける。セマグルチドは優秀で、週に1度の投与で16カ月(およそ1年半)で体重の15パーセントを削減した。90キロの人が約75キロになったわけだ。ただしセマグルチドは注射薬で、薬局で買える薬ではなかった。 爆発的なブームとなったのは、自分で注射できるサクセンダと経口投与のリベルサスが登場してからだ。ノボ ノルディスク ファーマ社の株価は急増し、2023年時点で同社の本拠地であるデンマークのGDPを上回っているという。 しかし健康上のリスクはないのか? 90年代にはアンフェタミン類似成分を利用したやせ薬で死者を出す騒ぎがあった。やせても不健康になってしまったら元も子もない。 2023年8月、同社は肥満で血管障害を持つ1万7000人を対象に大規模な試験を行った。その結果、セマグルチドを摂取している人は、プラセボを摂取している人に比べて、心臓発作や脳卒中など血管疾患のリスクが20パーセント低くなると発表した。やせたことで、生活習慣病のリスクが大きく減ったわけだ。 ※1 「Blockbuster weight loss drugs show promise for a wider range of health benefits」(Science, Vol 382, Issue 6676)