地方出身の友人に「子供部屋おばさん上等!」と背中を押され…会社員との年金格差に愕然とした40歳中年女性が「やっぱり実家に住み続けよう」と思ったワケ【社労士の助言】
フリーランスとして働いている40歳・都内の実家暮らしのAさん。「いい年なのに実家暮らし」という世間の目もあって一人暮らしをしたほうが思っていたのですが……本記事では、角村FP社労士事務所の特定社会保険労務士・CFPの角村俊一氏が、フリーランスが受け取れる年金について詳しく解説します。 【早見表】年金に頼らず「1人で120歳まで生きる」ための貯蓄額
「こどおば」と呼ばれても…
フリーランスの女性Webライターとして活動しているAさん(40)は一人っ子で実家暮らし。ここ最近の売上は年間700万円ほどあり、生活には困っていません。年金生活の父親(70)と母親(68)とともに仲良く暮らしています。 しかし、ネット上では中年になっても実家のこども部屋で暮らす人を「こどおじ/こどおば」と揶揄する風潮が。ご近所さんの目も考えると「いい年をして実家暮らし」というのは気が引けます。一人暮らしをしようかなと思うことはありますが、いつ仕事がなくなるかわからないフリーランスの身としては、ギリギリ都内にある実家に居続けるのもありかなとも思います。自分の老後はもちろん、これから年老いていく両親のことも心配です。 老後の年金や両親の介護などを考えると、「こどおば」と呼ばれても実家にとどまりながらお金を貯めるほうがいい気がします。いろいろ考え始めると、老後資金と介護資金のことで頭がいっぱいに…混乱したAさんは、先日フリーランス交流会で知り合ったFPにこれからのことを相談してみました。
フリーランスと会社員の年金格差に愕然
日本は国民皆年金制度なので、誰もが公的年金に加入しています。しかし、働き方の違いによって年金への加入状況が異なります。 誰もが加入するのは基礎部分である国民年金。加えて、会社員や公務員は厚生年金にも加入します。フリーランスは1階建て、会社員等は手厚い2階建ての年金制度。これが1つ目の年金格差です。 【年金格差(1) 加入する年金制度】 フリーランス:国民年金 会社員等:国民年金+厚生年金 2つ目の年金格差として、年金保険料の負担が挙げられます。 Aさんは毎月国民年金保険料を支払っています。保険料額は毎年見直されますが、令和6年度の保険料額は月額 16,980 円。Aさんの収入に関係なく定額です。全額自己負担で、翌月末日までに納付しなければなりません。一方、会社員等の厚生年金保険料額は給与に応じて決められます。 例えば、給与が200,000円の方であれば保険料は月額36,600円です。しかし、保険料の負担は労使折半なので、本人負担は月額18,300円となります。フリーランスと違い、会社が保険料を半分負担してくれるのです。なお、会社員等の国民年金保険料は厚生年金保険料に含まれると考えます。 【年金格差(2) 年金保険料の負担】 フリーランス:全額自己負担 会社員等:労使折半 3つ目の年金格差は老後の年金受給額です。 Aさんは国民年金の第1号被保険者として60歳になるまで保険料を納める義務があります。加入期間は20歳から60歳までの40年間。全ての期間にわたり保険料を納めれば65歳から満額の老齢基礎年金が受給できます。 老齢基礎年金額は毎年見直されますが、令和6年度は年額816,000円(月額68,000円)です。会社員等であれば老齢基礎年金に老齢厚生年金が加わりますが、フリーランスは老齢基礎年金だけなので、老後の生活資金としては心もとないといえます。 【年金格差(3) 老後の年金受給額】 フリーランス:老齢基礎年金816,000円(月額68,000円) 会社員等:老齢基礎年金816,000円(月額68,000円)+老齢厚生年金(現役時代の報酬等に応じた額) ちなみに、厚生労働省「令和4年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、令和4年度末現在の厚生年金(会社員の場合)の平均年金月額は、老齢基礎年金の額を含めて約 14 万5千円となっています。Aさんはフリーランスと会社員で老後の年金額が倍以上違うことに愕然。老齢基礎年金を満額受給しても生活していくのには全く足りません。世間体を気にして一人暮らしをするより、老後に向けて何らかの準備をしなければと強く思いました。 実家に残り老後に備えるAさんには、実は公的年金に上乗せして加入できる制度があります。私的年金とも呼ばれる国民年金基金、付加年金、iDeCoです。また、フリーランスの退職金として積み立てを行う小規模企業共済という制度もあります。2024年1月から始まった新NISAも選択肢の1つとなるでしょう。 一人暮らしをして家賃10万円を払うのであれば、例えば、運用リスクのない小規模企業共済に毎月5万円を積み立てるほか、最近のインフレを考慮してiDeCoで運用リスクを取りながら投資信託などに毎月5万円を積み立てるなどが考えられます。なお、iDeCoは原則として60歳になるまでは資金を引き出すことができないので、新NISAを併用してもいいかもしれません。 フリーランスに定年はないので、Aさんは年齢にかかわらず働き続けることはできますが、税制優遇措置もあるこれらの制度を活用して今から老後に備えたいものです。
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