目の前を走っている車が追い越しをしようとしたら、その先の車が追い越させないようにスピードを上げていました。見ていて危なかったのですが、違反にならないのですか?
車を運転する人は必ず道路交通法(以下、道交法)を学んだはずですが、細かい規定については記憶が曖昧という人も多いのではないでしょうか。しかし、普段運転しているときに道交法を意識していなくても、法律上は知らなかったでは済まされません。 本記事では、車での追い越しについて違反となるケースを解説します。 ▼ハンズフリー通話での運転は「違反」になる? ペナルティが発生する場合についても解説
追い越しとは
追い越しの定義や正しいやり方は、以下のとおり道交法で規定されています。 ●追い越しとは、車両が他の車両等に追いついた場合、進路を変えて追いついた車両等の側方を通過し、かつ当該車両等の前方に出ること ●追い越すときは追い越される車(前車)の右側を通行する。ただし、前車が右折するために道路の中央(一方通行の道路では右端)に寄って通行しているときは、その左側を通行しなければならない。 ●追い越ししようとする車は反対や後方からの車、前車に十分注意する 上記を簡単にまとめると、車線を越えて右側から前車を追い抜き、さらに車線を戻して前車の前に出ることが追い越しです。ただし、追い越し可能な車線であることやスピード違反をしないことが前提となります。 これらを踏まえて、本章では追い越しが交通違反となるケースや、似た言葉で勘違いしやすい追い越しと追い抜きとの違いを解説します。 ■追い越しと追い抜きの違い 追い越しは、前車を追い抜いてから車線を戻して前車の前に出る必要があります。一方、追い抜きは道交法では明確な規定がなく、同じ方向に進む複数の車線がある場合に、隣の車線の車よりも前に出ることで、追い抜き後の車線変更はありません。 追い越しは道交法で規定されているため明確なルールがあり、違反すると行政処分や刑事罰が科せられます。一方、追い抜きは道路交通法で禁止されていないものの、スピード違反や安全運転義務違反など、他の交通規則を順守する必要があります。 ■追い越しが交通違反となる場所 道交法第30条では、追い越しが禁止されている場所が明確に定められています。これらに該当する場合、追い越しを行うと違反となります。追い越し禁止となる主な場所は、以下のとおりです。 ●標識で追い越し禁止となっている場所 ●道路の曲がり角付近 ●上り坂の頂上付近や勾配の急な下り坂 ●車両通行帯が設けられていないトンネル内 ●交差点や踏切、横断歩道、自転車横断帯の手前30メートル以内の場所での追い越し これらに違反した場合は、反則金が科されます。追い越しに関する反則金と罰金については、後で詳しく説明します。 ■追いつかれた側も交通違反となるケースがある 追い越しに関するルール違反はほとんどが追い越す側(後車)のものですが、追い越される側(前車)に関する違反もあります。前車が後車の追い越しを妨害しようとしてスピードを急に上げると事故が発生する危険が高まるからです。 そのため、道交法27条では前車に関する以下の義務が規定されています。 ●追い越しを終わるまで速度を増してはならない ●追い越されるときに道幅の余裕がない場合は、できるかぎり左側に寄って道を譲らなければならない 上記の義務に違反した場合も、道交法違反となります。