俳優・横浜流星の唯一無二の魅力とは? 映画『正体』考察&評価レビュー。藤井道人とのタッグ作から読み解く役者としての現在地
映画『正体』が公開中だ。監督は藤井道人、主演は横浜流星。森本慎太郎、吉岡里帆をはじめ豪華キャスト陣が脇を固める。殺人事件の容疑者として逮捕された男が脱走の末、身を隠し、5つの顔を持ち逃亡犯として生活を続けていく本作。見所と“俳優” 横浜流星の魅力に迫る。(文・加賀谷健)【あらすじ キャスト 解説 考察 評価 レビュー】 【写真】横浜流星の唯一無二の魅力とは? 貴重な未公開カットはこちら。映画『正体』劇中カット一覧
なぜ人は横浜流星の顔に惹きつけられるのか?
『それSnow Manにやらせてください』(TBS系)2024年8月9日の放送に続いて、『東京フレンドパーク』復活第2弾となる11月18日放送回(『それスノプレゼンツ!東京フレンドパーク』月曜復活SP)を見た。豪華ゲスト陣が渋滞して目のやり場に困りながらも、前週の予告編からすでにひとりの出演者に目が釘付けになった。ちらっと写っただけでわかる。その美しさ、その麗しさ。2019年に発売した2nd写真集『流麗』のタイトルからさらに美しさを練磨した、美麗を極める横浜流星がそこにいた。 この美麗を見て、映画評論家・淀川長治によるつややかな評言を思い出した。 ルキノ・ヴィスコンティ監督の『若者のすべて』(1960年)HDニューマスター版DVDに封入された解説ブックレット所収の「『若者のすべて』このヴィスコンティ作品」で淀川は「洗いあげられたようにこの映画ではまっしろだった」と主演のアラン・ドロンを評している。 ヴィスコンティ映画の主演俳優と横浜では遠いようでいて、DVDパッケージ表面に浮かぶ白黒ドロンの超クロースアップから流れる涙の美しさと『流麗』表紙に浮かぶ横浜は「洗いあげられたよう」な顔の魅力によってたしかな呼応関係にある。現在の横浜流星には、バラエティ番組出演中でさえ真に迫るものがあるとぼくは感じる。 というように外面性ばかり強調して書くと、「美しいのは見た目だけじゃない。内面もだろ!」とお叱りの声が聞こえてくる気がする。 最新主演映画『正体』の公開を控える横浜が出演した『日曜日の初耳学』(TBS系、11月24日放送回)で、『DCU~手錠を持ったダイバー~』(TBS系、2022年)で共演した阿部寛が「世間で思われてるのと変わらないですよ。裏表はないですよ。すごく信頼できる」と横浜についてコメントしている。 横浜本人の内面性を端的に示すコメントだが、俳優にはもうひとつ、本人の内面だけでなく演じるキャラクターの内面が関わる。そうした内面の二重性が俳優の演技を複雑にする。 そうはいっても出演作品の画面上で判断するなら、そこには演じる俳優の内面やキャラクターの内面(心理)を含んだように見える外面としての演技が写っているに過ぎない。横浜の外面にあくまでこだわりたい理由はそのためである。 『東京フレンドパーク』復活SPも『正体』を宣伝するための出演だったが、本作はまさに横浜流星の顔、顔、顔の外面的な映画だからだ。