悩みをひとりで抱えてしまう。''頼り下手''な私が日本一開かれた家族に聞いたアクション
また、「安心感があるから頼れる」という側面がある一方、「頼り・頼られることの積み重ねによって未来への安心感を高めていく」こともできる。 浩基さん 「息子が3歳のときに『死』について質問してきたことがあったんです。その会話の中で僕が、『パパもママもいつか死んじゃうことが悲しい?』と聞いたら、息子は『〇〇も〇〇もおるから悲しくない。大丈夫やで』ってまちの人たちの名前を挙げながら言ったんですよ。そういった圧倒的な安心感を持てるのは、日頃から僕らがまちの人たちと頼り・頼られるということを重ねているのを見て、自分がその中に加わっていることを無意識にでもわかっているからだと思いました」
なぜ今、まちの人たちとの「頼りあえる関係性づくり」が必要か
池田家と一緒に過ごした2日間を経て自分の暮らすまちに戻ってから、筆者は実際に「頼る」を「聞く」に変換して、友人に悩み相談をしてみた。 「夜の時間、30分だけ電話で話聞いてもらってもいい?」 電話の最後、友人から「私もいい時間になったよ」と言われ、電話中に少し感じていた申し訳なさがなくなり、私にとって頼ることへのハードルが少し下がった。「頼ること」の小さな成功体験ができた気がした。 とはいえ、友人が私の何もかもを解決してくれるわけではないから、池田家のように頼る人を固定化せず、もっとまわりの人たちと柔軟に頼りあえる関係性をつくっていきたいと思っている。頼る人を固定化せずに広げていくことの重要性は、舞さんも取材の最後に念を押しながら伝えてくれたことだ。 「親や兄弟が近くに住んでいるから、まちの人たちと関係性を築かなくていいという考え方もあると思います。ですが、もしも家族が病気で倒れたとき、あるいは、どうしても都合がつかないときにやっぱり困ってしまう。一昔前までは回覧板や連絡網など、アナログな仕組みが自然と地域住民同士をつないでくれていたけれど、それらがなくなりつつある現代だからこそ、意識的にまちの人たちとつながろうとするアクションを起こしていくことがより重要になっていると感じますし、それが日々の心の安心感につながると思うんです」 「あいさつ」をはじめとしたコミュニケーションを通じて、一人ひとりが自分の半径1キロ程度の生活圏を頼りやすい環境に変えていくことができれば、頼り下手な人はもちろん頼り上手な人にとっても、今よりもっと生きやすい社会に近づいていくかもしれない。
文・取材 : 根岸薫海 撮影 : 阪下滉成 編集 : 小山内彩希