『おむすび』『虎に翼』の共通点は“正解”を持たない主人公 挑戦し続ける朝ドラに幸あれ
朝ドラことNHK連続テレビ小説『おむすび』第13週「幸せって何なん?」は結(橋本環奈)と翔也(佐野勇斗)に危機が訪れて……からの、ハッピーエンドで、年末最後の放送をあたたかく締めくくった。 【写真】ヒョウ柄の衣装でパラパラを踊る歩(仲里依紗) 肩を壊し、野球選手の夢を断念することになった翔也はこれでは結を幸せにすることができないと別れを持ちかける。結はなんだかムカついてあっさり別れを認めてしまう。その後しばらく会わないうちに、翔也が別の人間になろうとギャルを意識して髪を金色に染めファッションまで変えたのを見た結は、「ギャルなめんな」とさらに怒りを募らせる。 突然、肩も夢も壊れた翔也のショックを慮ることなく怒りをまっすぐぶつける結には、たとえ若気の至りにしても、作劇上の強調にしても、それでいいのかと共感しづらい視聴者も少なくなかったと思うが、結自身もなんであんなこと言ってしまったのかと考え続け、なんとか答えを見つけたのが、第65話だった。 翔也は、男が働いて経済的に豊かになることで好きな女性の生活を守るという、昔ながらの考えの持ち主で、おそらくプロ野球選手になったら契約金も高額で結と結婚することができると自信を持っていたのが、無理となって自信を失ったのだろう。でも、結はプロ野球選手として華々しく活躍する翔也が好きなわけでも、ましてや、結婚したら夫の稼ぎで楽できるというような発想もまるでなかったと思う。その点ではへんな欲のない結は視聴者的にも好感度が持てるのではないだろうか。 結にとって翔也は、自分に寄り添ってくれて、誰にも言えなかった阪神・淡路大震災のときのことを話せて、しかも、自分ごとのように泣いてくれた人。そんな翔也が好きになったのだろう。確かに結の話に泣く翔也は素敵だった。 結が無性に翔也にムカついた理由は第65話、長台詞で語られるが、それだけでなく結は、翔也の言葉にできない夢を失った悲しさや怒りの波動を感じとって、影響されて怒ってしまったのではないかという気もした。あの日、翔也が結の話を聞いて泣いたように。ふたりはわかりあえているのだと思う。結と翔也はただただ無心にお互いのことを大事に考えている。お金とか、地位や名声などが第一ではないのだ。 世の中には若気の至りで、一瞬の感情でぶち壊しになってしまうケースもあるだろう。結と翔也がそうならなかったのは、米田家の人々の尽力によるものだった。翔也には歩(仲里依紗)が、結には糸島の永吉(松平健)と佳代(宮崎美子)が、それぞれそっと背中を押す。いや「そっと」という言葉は合ってないかもしれない。歩はギャル仲間を使って翔也をバーに連れ出し、パラパラによって真のギャル魂を伝授し、永吉はスナックひみこでカラオケを歌って、結に「幸せ」の意味を諭すのだ。どちらもかなり力技である。