女子200メートル平泳ぎ準決勝で力泳する鈴木聡美。決勝進出を決めた（撮影・中村太一）

　◆パリ五輪・競泳女子200メートル平泳ぎ（31日、ラデファンス・アリーナ） 　日本勢の競泳五輪代表では史上最年長の33歳、鈴木聡美（ミキハウス）＝福岡県遠賀町出身＝が準決勝に臨み、2分23秒54の全体8位で日本時間8月2日の決勝に進出した。 ■美しく輝くエッフェル塔、パリ五輪開会式中の街の様子は…【写真】 　鈴木が五輪で決勝レースに臨むのは、3つのメダルを獲得した2012年のロンドン五輪以来だ。五輪の報道関係者のホームページに「年齢は関係ない」と記されるスイマーが予選よりもタイムを伸ばして躍進を遂げた。 　予選は2分23秒80の組で3位、全体では5位。「予選にしてはいい記録で泳いだ。ただ、もう少し攻めても問題なかった。泳ぎのフォームはこのままでスピード感はもう少し出せたら」と先を見据えていた。 　12年前ロンドン五輪は初出場で100メートル平泳ぎは銅、200メートル同で銀、400メートルメドレーリレーでは銅と日本競泳女子選手では史上初となる1大会で三つのメダルを獲得した。 　ところがその後は苦しい時間が長く続いた。周囲の注目に感謝しながらも戸惑う自分がいた。水泳が好きで、自分の泳ぎを柔軟に追求してきたが、五輪の活躍で生まれた自身のイメージを守ることに固執した時期もあった。 　日本の第一人者になったことで油断も生まれた。「こんなに練習しなくても大丈夫だろう、と。どこかで慢心していた。少しなめてしまっていた部分が低迷に至った原因と反省している」。その後のタイムは伸び悩む。2016年のリオデジャネイロ大会は精彩を欠き、東京大会は落選した。 　メダルを獲得した当時の伸びやかなフォームにこだわりもプライドもあった。だが加齢に伴う体の変化に応じた泳ぎを構築する必要があった。師事する山梨学院大の神田忠彦監督から「変化なしには、進化はない」との厳しい言葉を受けた。「昔の泳ぎを否定された」と激しく反発もしたこともあった。 　それでも「このままでは終われない」という心の底から湧き上がった執念が鈴木を復活させた。悩みながらも長期的に続けた筋力トレーニングも実り、速いペースで力強く水を捉える新たな泳法とも合致した。 　昨夏に福岡で開催された世界選手権では100メートル平泳ぎで自己ベストを更新すると、今年3月の五輪代表選考会では2種目で出場権を勝ち取った不屈のスイマー。決勝で誰よりも輝いて見せる。