草笛光子「志穂美さんといると、生きる馬力が伝わってくる。舞台が役者の花道だと思っているから、女優魂を持って続けたい」【志穂美悦子×草笛光子】
今回のゲストは、花創作家の志穂美悦子さん、かつてのアクション女優の姿そのままに、鍛え上げられた肉体美はいまも圧巻の一言です。志穂美さんの長女で、女優の文音(あやね)さんと共演したことで、草笛光子さんは志穂美さんに再会しました。会うたびに草笛さんは「生きる馬力」を感じるようで――(構成=篠藤ゆり 撮影=天日恵美子) 【写真】ブルーのコートでスタイリッシュな草笛さん * * * * * * * ◆体を鍛え続ける理由は 草笛 まだ会わせてもらってないけど、犬種はなんでしたっけ。 志穂美 ホワイトシェパード。ジャーマンシェパードの1.5倍くらい大きいの。(写真を見せて)2匹いて、こんな感じ。 草笛 あら、大きい! 志穂美 犬を飼い始めたのは文音が高校2年のときなんですよ。文音が選んだのはプードルで、すっごくかわいいんだけど、主人が「俺がプードル散歩させてるのもなあ……」って。(笑) 草笛 あははは。それは確かに想像しただけで笑っちゃうわね。それでどうしてシェパードにしたの? 志穂美 昔、シェパードは軍用犬に用いられていて、仲間に届ける銃弾を体に巻きつけて戦場に出ていたんだとか。でも白い体毛で生まれると、戦場で使えないので殺処分されてしまう。そんな悲しい歴史を知った主人は、どうしても白いシェパードを残したくて東欧から呼び寄せたんです。まあ、いつのまにか散歩は私の担当になっていますけどね(笑) 草笛 私も以前、ラブラドール・レトリバーを飼っていたじゃない。大型犬って恋人みたいな感じなのよ。亡くなってからは毎日、写真に向かって「マロ、あんたは私の彼だったのよね」と話しかけてる。人間の男よりずっといいわ。 志穂美 わかります。夫がいてもいなくても、犬は恋人でいてくれる。
草笛 それにしても、あんな大きな犬を2匹も散歩させられるのも、普段から相当ハードなトレーニングをしているからよ。 志穂美 それはもうちゃんと鍛えてますよ。お花のため、やりたいことのため。でもその前に、私には家のなかに手強い《猛獣》がいるので(笑)。鍛えてないと、やっていけない。 草笛 『ばぁちゃんロード』の最後で、文音ちゃんがお嫁さん姿になるじゃない。試写会にいらしたあなたのダンナさん、終わったあと泣いてたわよ。 志穂美 え、そうですか。(笑) 草笛 ああ、やっぱり父親なんだなあと思ったわ。文音ちゃんが女優を目指したいと言ったとき、彼は反対しなかったの? 志穂美 いまは応援してますけど、最初、賛成はしませんでしたね。もともと、主人の事務所の子が演劇のワークショップに行くとき、土地鑑がないというので文音が付き添ったんです。 そうしたら「せっかくきたんだから君もやってみたら?」と誘われて、そこで演じる面白さを知ったみたい。「長渕剛の娘」という目で見られる重荷から解放されて、別人になる喜びを感じられたと言ってましたね。すごくラクになったって。 草笛 そうだったの。 志穂美 草笛さん、主人のコンサートにも来てくださいましたね。 草笛 少し前に長渕さんと雑誌で対談もしましたよ。最後にインタビュアーの方が「草笛さんのことを、どんな女性だと思いますか?」と聞いたの。そうしたら一言、「少女」って。あの方、私のことを育っていないと思っているのね。 志穂美 でも、あの人は本音しか言わないから(笑)。彼も一緒なんですよ。永遠の12歳。少年のまま。 草笛 じゃあ少年と少女でおしゃべりしたってだけじゃない!(笑)
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