草笛光子「志穂美さんといると、生きる馬力が伝わってくる。舞台が役者の花道だと思っているから、女優魂を持って続けたい」【志穂美悦子×草笛光子】
◆いくつになっても女優魂がある限り 志穂美 そういえば私、草笛さんにお聞きしたいことがあって。草笛さんは、何歳まで生きる予定ですか? 草笛 予定? 予定はねえ、未定なのよ。(笑) 志穂美 唐突にごめんなさい。でもこれをうかがうことは、いまの年齢になった私にとってとても大事な意味があって。私は「生きること」に対する目標は絶対にあったほうがいいと思っていて、最近いろいろな人にこの質問をしてるんです。 草笛 自分でも「え、もうこんな歳になったの?」と思うことはあるけど、正直、年齢ってどこか他人事に感じるのよね。年々、何かをするのが大変になっているのは確か。でもつらいというのは面白いことでもあるし、「ああ、90になるとこんなふうになるのね」と、どこかで面白がってるわね。 志穂美 人前に出て表現をするとアドレナリンが出るし、それも元気の源になっているんじゃないかな。 草笛 あなたも同じよ。あなたといると、生きる馬力が伝わってくる。それが羨ましいわね。私は最近、馬力不足になってるから。 志穂美 いまもちゃんとエクササイズされているじゃないですか。草笛さんには、100歳まで舞台に立っていただきたいです。 草笛 長台詞を怖く思う気持ちはあるけれど、やっぱり舞台が役者の花道だと思っているから、私も続けたい。女優魂を持っていれば、なんとか続けられるんじゃないかと思うようにしてる。
志穂美 草笛さんには、みんなのモデルになってほしいんですよ。その姿が、私たちの目標や憧れになるんだから。 草笛 皆さんのモデルになるために苦労したかないけど(笑)。 でも、そうかもしれないわね。杉村春子先生が90歳のとき、舞台『晩菊』で姉妹役でご一緒したの。「は~い、いらっしゃいませー」って、90歳とは思えない高い声を出してらして、ますます尊敬したし、私もああなりたいと思った。 傾斜のあるセットだったからちょっと心配でね。何かあったらすぐにパッと手を出して支えられるよう、いつも近くに立つようにしてたの。 志穂美 そういう草笛さんの尊敬の念や思いやりは、端々で伝わっていたんじゃないですか。 草笛 何もおっしゃらないけれど気づいていたと思う。毎日、何かくださるのよ。「こないだまで着てた洋服だけどもう着ないから」とか。帽子もいただいたし、新婚旅行のときハワイで買ったというパジャマも。「新婚旅行? いつ?」と思ったけど。 志穂美 そんな杉村先生を見て、「かわいい」と思われたでしょう? 草笛 そうね。 志穂美 そしていま、私たちが草笛さんを見て、「かわいい!」と思ってます。(笑) 草笛 今日、パジャマもなにも持ってこなかったわね(笑)。そうだ、最後にお願いしておきたいことがあるの。私が亡くなったら、あなたがお花で飾ってくれる? 志穂美 また、そんなこと……。 草笛 でもあなたが派手にバーッと活けたら元気が出ちゃって、また歩き出したりするかもしれないわね。 (構成=篠藤ゆり、撮影=天日恵美子)
志穂美悦子,草笛光子
【関連記事】
- 志穂美悦子「結婚を機にアクション俳優を引退。夫・長渕剛のライブでもらうお花がきっかけで花創作家の道に」【志穂美悦子×草笛光子】
- 草笛光子×市村正規「《年配のご婦人とヨガデート》の相手は…。僕らには同じ血が流れてる。いまの僕たちにできる、若者とは違う舞台の取り組み方で」
- 草笛光子×三谷幸喜「三谷さん、そろそろ私のために書いてくださいね」「草笛光子に代わる役者なんて、誰もいませんから」
- 草笛光子さんが第30回読売演劇大賞、芸術栄誉賞を受賞「ブロードウェイで踊る80代、90代の女優さんに憧れて。愛嬌たっぷりの役者を目指して闘い続ける」
- 草笛光子「グレイヘアのきっかけは舞台での坊主頭。補聴器を使って以来苦手だった歌は何十年ぶりに低音を褒められ」