「フリップネタがもはやプレゼン」東大卒芸人・石井てる美「自分の殻破れずウケない」葛藤と支え合った平野ノラの存在
■「ウケなくても落ち込まない」失敗しても全否定しない気持ちに ── 転機となったネタは、どんなふうにして生まれたのですか? 石井さん:それまでの私は、自分がおもしろいと思うものをどういう形で表現すればいいのか、わからなかったんです。そんなときにキンタロー。さんが踊っているネタを見て、「こういう笑いの取り方もあるんだ!」と衝撃を受けました。キンタロー。さんは、わたしよりもデビューは少し後でしたが、才能に溢れていて、秒速で売れていった方でした。彼女も型にハマらないネタで、心から楽しそうに踊っていらっしゃいますよね。
もともとダンスが好きで「少女時代」も好きだったので、「私も踊ってみよう!」と。テレビのオーディションには受かりませんでしたが、自分らしい表現が見つかったことで、前に進めた感覚がありましたし、舞台でも笑いがとれることが増えましたね。 ── 舞台はお客さんの反応がダイレクトに感じられるのが醍醐味ですよね。いっぽう、反応がよくないときは、どうやって気持ちを立て直すのでしょう? 石井さん:もちろんガッカリはしますけれど、あまり深刻に受け止めたり、過度に自分を責めないようにしています。ある意味、ふてぶてしさや「忘れる力」が大事です。
マッキンゼーで働いていたときは小さなミスを気にして落ちこみ、自分を責めすぎた結果、潰れてしまった。でも、後から振り返ると、「そんなに気にすることはなかったな」と思うんです。周りの優秀な人たちだって、失敗して悪い評価をもらうこともある。涼しい顔をして水面を泳ぐアヒルみたいなもので、すました顔で過ごしていても、水面下では、みんな足をバタバタしてもがいているんですよね。ただ、それを口にしないだけ。 失敗するのがいけないのではなく、そこで落ち込んで、いつまでも立ち上がらないのがいけないのだと知りました。これがマッキンゼーで得た最大の教訓だったので、芸人になったいまは、ミスをしてもそれを引きずるのではなく、早めに気持ちを切り替えるようになりました。