「フリップネタがもはやプレゼン」東大卒芸人・石井てる美「自分の殻破れずウケない」葛藤と支え合った平野ノラの存在
仕事がないからバイトをしながらの下積み生活。周りからは、「東大卒」「マッキンゼー出身」をウリにして、インテリ芸人や知識人枠のタレントを目指せばいいじゃない?と、さんざん言われましたが、「いや、そういうわけじゃないんだよな…」と思っていました。
■売れない時代に支え合った平野ノラの存在 ──「そういうわけじゃない」というのは…? 石井さん:実際、「東大卒マッキンゼー出身の女芸人」として雑誌に取り上げられたり、クイズ番組に出演させていただき、それがきっかけで今の事務所に所属することができました。ですが、私自身は自分の経歴を前面に出したかったわけではないんです。高学歴の芸人さんは、すでにたくさんいらっしゃいますし、社会情勢や時事問題についてなにかを語れるほどの知識もない。文化人枠として突出したものがあるわけでは決してないことは自分が一番よくわかっていました。
それに、やっぱり笑わせることが好きで芸人になったので、お笑いで勝負したい思いがありました。バカバカしいことをして、みんなを笑わせたい気持ちが強かったんです。でも、当時のマネージャーはすごく厳しく、へこむこともあって…。なにもできない自分がふがいなくて、本当に苦しかったですね。 ── つらい時期に、支えになったものはありましたか? 石井さん:同じ事務所の芸人仲間に大親友の平野ノラちゃんがいるのですが、彼女も下積み時代が長くて、毎日連絡をとりあっていました。「オーディションであのネタをやったけれど、こんなこと言われちゃった」とか「いつかギャフンと言わせてやろう!」と、お互いに励まし合っていましたね。ノラちゃんは養成所の2期下なのですが、事務所に所属したのは同じ時期。私にとって、この世界で初めてできた、心から腹を割って話せる友だちでした。彼女がいなかったら、いまごろ芸人をあきらめていたかも。それくらい大きな存在でしたね。
そのうち、ノラちゃんがバブルのネタでブレイクして、私もヒラリー・クリントンのものまねで取り上げてもらえるように。2016年に大統領選挙でヒラリーが落選し、「このままネタをやり続けていいのかな」と悩んでいたら、「やめないで、ガンガンやりなさいよ」と励ましてくれて、心強かったですね。 ── 長いトンネルから抜け出せたのは、なにがきっかけだったのでしょうか? 石井さん:2013年ぐらいに、足が短くずんぐりむっくりなオモシロ体型を活かして、K-POPの「少女時代」のパロディで「短足時代」というネタをやったんですね。そこで初めて、事務所のお笑いライブで優勝できて、周りからも「本当はこういうことをやりたい人だったんだね」とわかってもらえるように。そこから少しずつ流れが変わっていきました。