日本株、じつは今年すごいことになっている「自社株買い」の勢いにのる「プロ厳選企業5選」を実名紹介
日本ゼオン(4205)
■株価(6月7日時点終値)1416円 自動車部品向け特殊ゴムのエラストマー事業と高機能材料事業が二本柱。耐熱性や耐油性に優れるゴム製品で高い市場シェアを誇っている。C5留分(ナフサを精製することで取り出せるさらに細かな留分)由来の透明樹脂「ゼオネックス」やフィルム「ゼオノア」は、ディスプレイ用やリチウムイオン電池向けに需要が拡大中だ。これにより、2025.3期には光学樹脂の大幅増益が見込まれている。 ニッチで競争力の高い製品ラインナップを強みとする同社は、強固な財務体質も併せ持つ。株主還元にも積極的で、23.3期と24.3期の減益局面が続いた時期においても増配を継続した実績がある。 同社は4月に1000万株・100億円を上限とした自己株取得枠を発表した。上限株数を取得時の発行済株式総数に対する割合は4.73%となる。政策保有株式の売却も予定されており、追加的な株主還元にも期待が高まろう。PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る株価水準では、中長期的な投資機会としても魅力的と考える。
日本ハム(2282)
■株価(6月7日時点終値)4859円 国内食肉加工業界のリーダーとして、食肉事業と加工事業の二本柱で強固な地位を築いている。ファーム(畜産場)から加工、卸までの一貫体制と、食肉シェアで国内トップの20%強を誇る市場ポジションを強みとしている。 構造改革による利益改善にも積極的に取り組んでいる。加工事業では、値上げの浸透や商品ミックスの改善により、原材料コストの上昇を吸収している。「シャウエッセン」など高収益商品の強化と低収益商品の撤退により、収益性のさらなる改善が期待されるほか、豪州事業の採算改善とアジア事業のリストラ効果にも注目したい。 株主還元策の強化も見逃せない。DOE(株主資本利益率)目標を3%程度に引き上げ、配当性向を40%以上に設定したほか、5月10には400万株・200億円を上限とした自己株取得枠を発表した。取得期間は2024年5月10日から2025年3月31日までで、上限株数を取得時の発行済株式総数に対する割合は3.9%となる。 なお、今年の3月期決算会社の6月定時株主総会は、6月29日が集中日(集中率25%)となる。自社株買いを発表した企業の中には、自社の株価を割安と判断している企業も少なくない。株価が軟調に推移する場面では、割安感修正と需給インパクトによるサポートが期待できそうだ。
宇野沢 茂樹(証券アナリスト)